先日の東北地方太平洋沖地震で、瓦屋根の棟に被害を受けたお宅が多くあります。
棟を直すか、それとも建物自体も古いので屋根を軽くしたいと思い悩むところだと思います。
地震に対して、屋根材を軽くするのは安全側に作用します。
屋根が軽くなると建物の重心が下がるので、大きく揺れる事を防ぐ事が出来ます。
また、筋交1か所当りの負担も小さくなるのでより大きな地震に抵抗する事が出来る事になります。
さて、では各屋根材の重さはどのくらいなのでしょう?
粘土瓦 1㎡当り 43.34kg
平板スレート(コロニアル) 1㎡当り 20.60kg
金属系段葺き(しゃねつルーフ)1㎡当り 5.34kg
3間x5間の15坪のお宅で、屋根面積は、大体21坪くらい。
21坪は、約70㎡ですから
粘土瓦 3,033.8kg
平板スレート 1,442.0kg
金属系段葺き 373.8kg
粘土瓦では、実に3トンの瓦が載っています。
これを平板スレートにすると半分。
金属系段葺き材にすると1/8。
重量だけを考えれば、これだけの差があるのです。
軽い屋根材を使う事は、新築の場合は同じ耐震性にするなら少ない筋交で済み、コストが下がりますし、既存の建物なら瓦から変更する事で、筋交(配置のバランスを考えなければ)を増やしたのと同じ効果になります。
重さではこんな結果です。
では、各屋根材の特徴を。
瓦のメリットと言うと、色彩等の見た目の美しさと耐久性です。
寿命は大体55~60年と言われ、その間ほぼメンテナンスフリーですので、トータルコストは安くなります。
瓦とその下の野地板との間に空間がある為、断熱性に優れます。
隙間も多いので、下地の換気や湿気の排出等も出来、下地の健全性が保てます。
また、今回被害をうけたのはのし瓦と冠瓦で棟を作る和型の瓦屋根で、洋風デザインにあう平型では
棟を高く積む事がほとんどない為、被害を受けませんでした。
和型の瓦でも平成13年に刊行された『瓦屋根標準設計・施工ガイドライン』による施工(以下ガイドライン工法)で耐震性が飛躍的に高まります。
平板スレートのメリットは、瓦屋根よりも軽く仕上がる事と、見た目の屋根の厚みを薄くする事ができるのでシャープな印象の建物に仕上がります。
セメント版を高圧養生する事で、高強度が得られるので薄く仕上がります。
施工時のコストが安く上がる事も上げられますが、10前後で表面の塗装面がはげ苔が生える等見た目が悪くなってしまいます。
メーカーは、この状態でも屋根材としての機能は果たすので問題ないといいますが、見た目も性能の内と考えると塗替え等のメンテナンスを行う事になり、その後は5年位での塗替えをお勧めします。
寿命は30年位。
金属系の屋根材は、葺き方に多くのバリエーションがあり、緩い勾配にも対応出来る為、金属特有の無機質な質感から、モダン建築で採用される事もあります。
現在は、ガルバリウム鋼板とよばれるメッキにアルミニウムを含ませる事で、以前のトタンよりも耐久性が向上しています。
塗装面が劣化する為に、塗替えも必要になります。
雨音は他の屋根材に比べ大きいのは否めませんが、断熱材など他の部分の工夫でかなり抑えられます。
また、完全に錆びない訳ではないので、メンテナンスの頻度によって寿命は大きく変わります。
地震に対しては、軽い屋根材が有利ですが、台風や竜巻など強い風に対しては被害を受けやすくなります。
軽い屋根材で軒の出を大きくする事は、被害を受けやすくなります。
既存住宅、それも昭和56年以前に建てられた住宅は、阪神大震災でも多くが倒壊の被害にあいました。
それだけでは不十分な事もありますが屋根材を軽くしてあげる事はかなりの耐震効果が得られます。
それでも瓦が良いと思われる方は、耐震診断を受け、耐震工事を行う事をお勧めします。
新築の場合は、建物の強度は以前よりはるかに上がっていますので、瓦屋根でも十分な耐震性があります。
和型瓦自体の施工方法を耐震性の高い『ガイドライン工法』を採用する事で、棟を含め桟瓦の落下等も防ぐ事が出来ます。
今回の地震は確かにショッキングで、多くの瓦屋根に被害をもたらしましたが、日本に古くから受け継がれてきた瓦という屋根材を否定してしまう方向へ進んでしまうかも知れませんが、それはいかがなものでしょうか。
長年受け継がれてきたおかげで、職人たちが自己流で葺いてしまったという事は確かにあり、被害を受けた屋根の養生を行っていると色々な事が分かります。
(全ての屋根材に言えますが)適正な方法で施工する事で、瓦屋根でも地震被害を抑える事が出来るのです。
有限会社カトウ工務店は、1級建築士の設計事務所併設の工務店です。
住宅の耐震診断も承りますので、ご興味のある方はご相談ください。