昨年は、耐震診断を2棟程行いました。
行った耐震診断は一般診断の方法1というものです。
これは、一般的な木造住宅を対象とした診断法で、主に筋交等の耐力壁で地震に抵抗する建物を対象としています。
大きな声では言えないのですが、耐震診断の準備をしてから久しぶりのご依頼でしたので思い出すように色々と調べました。
この一般診断というのは原則として、診断の際、建物の部分的な解体は行わないという診断方法です。
インターネットで調べてみますと、それを逆手にとって室内を一通り眺め、外部を眺め時間的には2時間程度、持ち帰ってそれ用のソフトにデータを入力して出来上がり!なんて事をしている設計士がいると知りました。
また、今回診断を行ったお客さんの手元にも建築確認に添付された図面をもとにして、他の業者が、『無料』で行った一般診断の資料もありました。
結果から言えば、無料の診断の点数は0.5位で『倒壊する可能性が高い』と、私が行った0.39と総合評価としては同じでした。
現況と図面とが一致しなかったことは、この点数差から容易に判断できると思います。
耐震診断は、診断して終わるものではありません。
診断の先には耐震補強があるので、耐震診断は現況に則したものでなければ、耐震設計すら出来ないのです。
私、大工としてこの業界に入りましたから、20年前位から現在までの現場の現状ってのはいろいろと見聞きしています。
現在は、平成12年の建築基準法の改正で耐力壁のつり合い良い配置について具体的な決まりが出来ましたから、それ以降のものは恐らく図面があればそれ通りに施工されているはずなので、問題は少ないですが、それ以前は金融公庫を利用した住宅でも結構いい加減というか・・。
平成12年以前の耐力壁の考え方は、法律では『つり合い良く配置する』と規定されているものの具体的な方法は規定されてなかったので、設計士が設定した耐力壁が納まりや、プラン変更によって移動しなければならなくなると、x方向ならx方向で別の場所に簡単に移動して施工していた事実があります。
もともとの設計が、規定がない為『つり合い良く配置』している訳ではないので、金融公庫住宅でも、移動してあれば問題なかったのです。
そういう訳で、残っている図面に筋交位置が記されていても、本当にそこに施工されているかというと分からないのです。
このことは、先日市役所職員と別件で話をしていた時に、職員の方から言っていましたから、行政も周知の事実なのです。
といことはどういうことか分かりますよね?
実際に施工状況を確認しない事には、金融公庫を利用した住宅でさえ正確な診断など出来るはずがないのです。
それなのに、床下にも天井裏にも潜らずに室内を眺めて行った診断など、信用できません。
診断を行った設計士は、『提示された当時の設計図を元に診断を行ったので、現況と違っていたとしても、私の責任ではない』と言うでしょう。
その通りです。
図面とは本来、信用するに値する資料ですから。
しかしながら、時代背景として大工が絶対的な地位にいて完了検査もほとんど受けなかったですから、建築確認に添付されている図面とは全く違う建物が建てられていたなんて事もざらにあり、図面通りの施工などまず信用出来ない時代がある事は事実なのです。
それを無視して、図面と現況を照らし合わせる努力もせずに診断したところで意味などありません。
お客様は、現実にその住宅に住んでいてその住宅の耐震性能を知りたいと思っていますし、危険であれば耐震補強もしたいと思っていますから、出来る限り正確な診断をすることが当たり前なのです。
そういう考え方で耐震診断を行うとどういう流れになるかと言いますと。
まず、予備調査を行います。
お客さんの記憶を参考にしながら当時の施工状況や、リフォームの履歴を調査します。
図面があればそれを参照しながら、現況と図面の違いや、仕上げを確認していきます。
図面が無ければ、図面に起こしながら各部の仕上げも確認していきます。
別の日に改めて、現場調査を行います。
外部の基礎の施工状況(各部の寸法)、クラック、外装材の状況等を、地面を掘り返したり、屋根に登ったりしながら確認していきます。
内部は床下や天井裏に潜り、基礎の配置や金物の施工状況、耐力壁の位置、構造体の劣化状況などを確認していきます。
40坪位の建物だと、現場調査は軽く丸々一日かかります。
そこで得た情報を元に専用のソフトにデータを入力して診断を行い、現場写真も整理して考察も書きますと3~4日程度の手間がかかります。
その診断の費用として、10万円前後の費用をいただいています。
因みに、鴻巣市では市内の業者が行った一般診断法での耐震診断について、助成金が最大で5万円(費用の1/2以内)出ます。
また、耐震補強の補助金(20万、65歳以上30万)を利用する場合は、耐震診断で助成を受けていないといけませんので、ご注意ください。
同時に行うリフォーム助成金も利用することが出来ます。
色々と書きましたが、現在建てられる住宅は、10年の保証が義務化されている関係で、瑕疵保険に入ります。
そうすると、耐力壁の施工状況の現場調査が行われますから、図面通りに入っている・・筈です。