体験しないと気づかない事で介護保険適用等の住宅改修があります。
最大20万円(本人1割負担なので、実際には18万円)の補助を利用する介護保険の改修工事も行います。
改修が必要な本人様の体の状況を鑑みながら、必要と思われる部分に手すりを設けたり、段差を解消したりするのですが、これがなかなかに大変な作業です。
打合せは、ケアマネージャー、リハビリ担当者、介護用品担当者、施工者が立ち合いの下、本人様に対策が必要であろう部分で実際にどういった動作をしているかを見せていただき、対策を考えます。
壁などに手をつくのであればその周辺に手すりを取り付けますが、どういう動作の中で手をつくかによって鉛直手すりなのか水平手すりなのか、はたまた斜め手すりなのかを検討していきます。
しかし、様々な事情で本人様が現場に同席できない場合は、関係者だけで本人様の状況を鑑みつつ現場で動いてみて必要なものを予想して検討していきます。
これがなかなか難しいのです。
例えば利き手の右手が不自由な方の場合、右手を使わずに動作を行います。
出入口の段差のある部分や、浴槽への入り方、便器に腰を掛ける際など体が大きく移動する部分について特に入念に検討していきます。
そういった事をしていくと、手すりの位置、向き、形状が見えてきますし、普段何気なく行っている動作がどこか一部不自由になるとこんなにも世界が変わるのだと実感します。
今回、私の父のケースですが、もともと右足の膝下を欠損しており義足を付けて生活をしています。
片足となるのは、最近では入浴の時だけですが、右膝の人工関節の手術を受けまして人工関節の強度もよく分からないのと、術後しばらくは余り衝撃を与えたくないので手すりの設置を検討しています。
片足での移動を現場(自宅の浴室)で行ってみましたが、いや~、怖い。
ケンケンと片足で移動する事は、左足に全体重と衝撃を加算しますので諦めます。
すると、前傾姿勢になり両手で何かにつかまり、体を前方にぶらんと振り出すように移動することになります。
出入口の壁に鉛直手すりでいいかなと考えていましたが、意味がないことが分かりました。
洗い場と浴槽の移動は、浴槽の縁に腰を掛け、両側の浴槽の縁に手を置けば問題ないことが分かりました。
片足なのと人工関節はあまり深い屈伸動作が出来ないので、洗い場の椅子から立ち上がる時に水平手摺が必要な事が分かります。
立上りでは一般的に鉛直手すりの採用を考えますが、片足なので鉛直手すりではバランスが取りづらそうです。
両腕で体を引き揚げるように立上る必要があり、水平の方が良さそうだと考えています。
浴室全体を使って動くので、介護用の大きな椅子を洗い場に置いておくのは邪魔そうです。
入口は片開きのドアの為、置ける場所は限られる上、椅子を置く場所は移動線上になります。
そうなると、座面は高いですが浴槽に浸かった状態で片手で移動できるくらいの重さのものがよさそうです。
今回のケースで片足である事の不自由さがどういった事か、垣間見えました。
もっともっと想像力を働かして、住宅改修のみならず、新築に置いてもお客様の動作を検討しなければならないなと感じました。