7~8年前でしょうか。
近所に大手の比較的お求めやすい価格帯のハウスメーカーの注文住宅が建ちました。
そこで行われていた断熱工事は、間違ったものでした。
その現場では一般的に使われている袋詰めのGWを使っていました。
袋詰めの断熱材は両端の耳を間柱や柱の見付面(正面、室内側の面)に留め付けるのが本来ですが、そこの職人は見込み面(側面)に留め付けていました。
よくある間違った施工方法です。
私が見付面に取り付ける通常の施工方法を知ったのは20年以上前ですから、断熱メーカーの施工方法の啓蒙活動の不足を思いますが、ハウスメーカーの現場監督も知らないというのは問題だなという事を感じました。
流石に、省エネにうるさくなってきている現在もこんな施工をしている現場はないと思いますが、『いまだにそんなことを?』と思う事が断熱の施工方法に限らずに様々なところで聞こえてくので、もしかしたら変わっていない現場もあるのかもしれません。
いずれにしても、現場の職人よりもメーカー側の意識の問題であって、そういった知識のある現場監督が指揮をとらなければ現場は変わりません。
さて、そんな間違った方法で施工された断熱材は、その性能を発揮できるのかどうかを考えてみましょう。
耳を見込み面に留める事により、断熱材を包む袋と内壁材の間に隙間が出来てしまいます。
そうすると、床下と天井裏がこの隙間によって繋がり、空気の移動が起こります。
移動する空気は壁の裏側から室内の熱を奪い、壁の中を上昇し奪われた熱は小屋裏を抜けて外部へと逃げていきます。
断熱材が性能を発揮する方向とは違う方向へと熱の移動が起こるのです。
裾や袖口、襟元が大きく開いたダウンジャケットを着ているようなイメージでしょうか。
体温で温められた空気は軽くなり、襟元から逃げていきます。
そうすると、ジャケット内は圧力が下がりますから袖口や裾、襟元から冷たい空気を内部に引き込みます。
その空気が内部で温まり、襟元から逃げていき、袖口や裾から冷たい空気が・・・
順番に書きましたが、これらが連続して起こる事で、ダウンジャケットの内側では風が吹いているようなものなのです。
当然のように、ダウンジャケットが持っている性能は発揮されずに、ダウンジャケットなのになんか寒いジャケットになってしまいます。
このダウンジャケットを暖かなジャケットにするにはどうしましょう?
①ダウンの厚さを増やす。
②ダウンをもっと保温力の高い高級品に換える。
③裾や袖口、襟を塞ぐ。
どれも暖かくなりそうですが①と②の方法は多少効果を期待できますが、ジャケット内の風は止みませんから十分に暖かくはなりません。
③を行い、風を止めることで外部に熱を逃がすことがなくなり、暖かなジャケットになるのです。
①や②を行う場合は、③も同時に行うことで更に暖かなジャケットになります。
住宅の断熱改修もこれと同じです。
壁の中に風が発生しないようにする事は、非常に重要な事なのです。
ダウンジャケットで言えば裾や袖口にゴムを入れて隙間を減らし、襟元はマフラーを巻くことで対応できます。
住宅ではゴムやマフラーの代わりに『気流止め』という部材を施していきます。
気流止めを外壁、間仕切壁の上下に施工し、壁の中に空気が出入りしないように塞いでいきます。
これで、風が止まり熱の逃げる量が格段に減り暖かな家になります。
この『気流止め』工事が前提にあって、天井・屋根、床又は基礎の断熱強化を施しますと、壁の半分以上は断熱材の強化は出来なくとも最新の省エネ住宅には劣りますが、壁の中の断熱材が持っている性能を十分に発揮して、現在よりも格段に快適な住宅になります。
住宅内の温度差が関係して亡くなられる方が後を絶ちません。
年間では交通事故で亡くなる方を大きく上回るそうです。
仕上げや設備のリフォームだけでなく、断熱リフォームも検討してみてはいかがでしょうか。