天井裏に断熱材を入れましょうという内容の工事が、着工当日に畳を辞めてフロアにすることになり、畳を上げてみるとシロアリの被害が発見され、荒床を剥がしていくと束石が4尺ピッチとやや広め。
急遽、束石からやり直す事になり床の断熱も行う事になりました。
弊社の断熱は通常、GW(グラスウール)で行うので束石を設置してから、大引間、根太間に充填して捨て張り合板を張るまでに1日半と、結構手間がかかります。
床束は鋼製に変更して、大引は注入材を採用しました。
押入の敷居の下には土台が無く、大引に留められた根太掛で床を支えていたり、隣の押入との間仕切り壁の下にも土台が無いのは同様。
ということは、ここの押入の壁に耐力壁としての役割を期待することは出来ません。
古い家(と言っても築4~50年位)を弄っていると、表面的には壁が多くて耐震性が高そうに見えても、いざ解体したり床下や天井裏に潜ってみると、今回のように土台が無かったり梁と繋がっていなかったりする事があります。
その結果を反映して見直していると、全く壁のないガランドウな建物だったなんて事もあるのです。
以前耐震診断を行った建物は、昔ながらの田の字プランで和室の四方の壁は引違い戸で開放的になる様になっています。
過去に台所周辺のリフォームをした際に一部の2,730mm巾の開口部を塞いで壁にし、合板を使ったとおっしゃっており、施工した大工も「これで安心だ」というような事を言っていたそうです。
しかし、単純に開口部を塞いだからと言って構造的に強くなるかというと、そうではありません。
まして2,730mm間口では耐力壁になりませんし。
更にこの建物の場合、天井裏に潜ってみると土壁なのですが木小舞が梁下まで達しておらず、当然土壁も梁下までは施工されていません。
天井から梁下まではどこを見ても、塞がっていない状況でした。
しかも、両面真壁の為、1,820mm巾の壁や開口部の上部は、中央に胴縁材(14x45)が梁から下げられているだけで、基本的には貫(15x90)で壁を支えている仕様です。
1階のほぼ全てが真壁ですから、外壁以外の間仕切壁には1か所も筋違は無く、土壁もそのような状況でしたから、建物内部の耐力壁は0という診断を下しました。
この建物で施された開口部を塞ぐ工事は、構造的には無意味です。
使う上では荷物が置けたり動線が変わるなどの変化がありますけど。
開口部分を耐力壁にするには、耐力部材(筋違や合板)を原則4辺共に構造部材(柱・梁・土台等)に留め付ける必要があります。
敷居と鴨居と柱に留め付けても、人間の力に対しては十分効きますが、地震や台風などにはほぼ無力なのです。
また、2,730mmの間口を耐力壁にする場合は、最低柱を1本、理想は2本それも土台と梁に繋がるものを設置しなければならないのです。
今回の現場では、将来使用する人がいないという事で、構造的な改修は行わず、断熱性を高める工事を行いました。
床も断熱工事を施したので、外壁面も地窓を2個外し壁とし、800mm高さの窓には内窓を施しました。
外壁面はプリント鋼板を剥がし土壁の外側に高性能GW(グラスウール)を薄く裂いたものを充填、内側も同じ手法で高性能GWを充填しました。
外した窓の部分や、天井より上の梁下までの部分には105mmを充填し0.2mmの気密シートを張って仕上げました。
間仕切り壁の上下には気流止めを施し、土壁(約10k相当GW50mmの断熱性能)なので、追加での断熱は行いませんでした。
天井は、高性能GW105mmを3枚重ねとし、部屋よりも910mm広く断熱施工しました。
熱的には大きく改善されます。
窓は西側。
寝室なので、冬場は日射を取得して暖めたいです。
夏は、日射を遮蔽する簾やシェードなどを付けたいのですが、お客様の都合もあり冬場の日射取得を犠牲にして、Low-Eのペアガラス仕様としました。
それでも、夏場の日射遮蔽は行いたいのです。