耐震補強は、床・天井を解体しなくとも補強できるキットが販売されていますので、それを利用します。
このキットは、販売会社が実物大の試験を何度も繰り返して、国から有効だという認定を取得していますから、施工にあたっては制限がありますが、解体範囲も狭く状況によって1日に1~2カ所の補強できるので効率が良くなっています。
本来、耐力壁は土台・梁・桁等の横架材【おうかざい】と柱に留付ける事が大前提ですが、認定品は横架材に直接面材を留付けずに耐力を発揮できるという製品ですから、認定品の施工には、注意が必要です。
その性能が担保される範囲は、実際の試験で確認された範囲になります。
セット品に含まれる金物や部材を使って、決められた寸法範囲を守って施工しなければ、メーカーとしては性能の保障は出来ないと言われます。
根拠がないですから、仕方がありません。
余談ですが、このキットを使用するには販売するメーカーの講習を受ける必要があります。
しかし、現在、講習自体を行う予定がないメーカーもあったりします。
耐震補強、普及していないですね。
いや、もう終局と言えるのでしょうか。
財団法人 日本建築防災協会が発刊していて耐震補強のバイブル的な『木造住宅の耐震診断と補強方法』は、2007年に従来の『木造住宅の耐震精密診断と補強方法』の改訂版として発刊され、同時に『木造住宅の耐震補強の実務』も発刊されました。
当時は、2015年までに住宅の耐震化率を90%にするように目指していたこともあり、一般診断方法に対応した耐震診断プログラムも開発され、広く耐震補強がされるようなりました。
実際の耐震化率ですが、2013年(H25)で約85% だったので、途中2年繰り上げて2015年(H27)に90%達成を目標にするも、2018年(H30)で約87%と遅々として進みません。
現在の目標は、2020年(R2)で95%、2025年(R7)でほぼ解消という事に修正されています。
昭和56年以前の建物の数は、2020年では900万戸(予想)で、うち耐震性の無いものは250万戸とされています。
そして、2025年にはおおむね解消という事は、旧耐震基準で建築された建物でも築年44年になり、流石に殆どは建替えられるだろうという判断でしょうか。
2023年現在では、耐震性の無い建物はどのくらいあるのでしょうね。
と、この目標はあくまでも、新耐震基準が適用された後は耐震性が十分にあると仮定した話(一応、新耐震基準の有効性は阪神淡路大震災で証明された)であって、昭和57年以降の建物でも震災で倒壊してしまった物はあります。
熊本震災では、2度の震度7が発生して、多くの被害を出しました。
その際に被害が認められなかったのが、性能表示の耐震等級3の建物です。
サンプル数は少ないですが、そのすべてが無被害と言っていいレベルでした。
4分の1法という耐力壁の配置のバランスを確かめる基準が出来た時点で、昭和57年以降だから安心という事は既に言えなくなっていますし、熊本震災が発生して、建築基準法の耐力壁の基準を満たしているから安心(そもそも、満たしているから倒壊しないという意味ではないのですが)とも言えなくなっています。
今後も耐震診断、耐震補強はまだまだ必要ですね。
現在の耐震補強は、現行の耐震基準を満たす評点1.0を目指して行われていますが、もっと高い数値を目指すケースも出てくるかもしれません。
評点1.0を目指すのであれば、昭和57年以降の建物は何枚も補強する必要はありません。
耐力壁の量は足りているはずなので、バランスを見直すだけで済みますから。
ただし、新基準が施行目前でそれ以降は、目指す評点も変わるのでしょう。
また、補強によって耐震等級3相当を目指そうとすると水平構面の補強が必須となり、大規模な工事となる可能性が高いでしょうね。
まぁ、とりあえずは、耐震診断を受けてみましょう。
どうするかは、それからです。