熱貫流率【ねつかんりゅうりつ】。
とある壁の暖かいこっち(室内)と寒いあっち(屋外)でどのくらいの熱が通り抜けたかって事をで、良いと思います。
省エネ性能を表す指標として使われるUA値(外皮平均熱貫流率)は、その建物から逃げていく熱量を、外皮(屋根、天井、壁、床、開口部)の合計面積で割った数値ですから、外皮の熱貫流率の平均値になります。
平均値ですから、同じUA値の建物でも、外皮それぞれの熱貫流率は違います。
外皮それぞれの熱貫流率がバランスよく設定してあれば値相当に快適です。
しかし、例えば壁を300mmの高性能グラスウールで断熱して、窓はアルミサッシのペアガラスと偏った物でもUA値で見れば高性能な建物になるでしょうが、快適に過ごせるかというと窓のそばは熱が大量に逃げていきますから寒いと感じますし、足元も窓のそばで冷やされた空気が床に降りてきますからすーすーするので、期待していたほどに暖かくないと思うでしょう。
結露も相当な量で発生しますから、建物の寿命もどうなのかと心配になります。
外皮の熱貫流率を小さくする(熱が逃げにくくする。断熱性能を上げる)と、外皮の表面温度は上がります。
そうすると、前回お話しした体感温度も改善する事になります。
それぞれの外皮の熱貫流率のバランスをとる事で、屋内の温度差を小さくする事が出来、体感温度も良好になります。
さて、もう少し細かいところを考えてみます。
それぞれの外皮の熱貫流率も平均値になります。
壁の熱貫流率、屋根の熱貫流率、サッシの熱貫流率など。
例えば壁で言うと、断熱材が充填されている部分と、柱がある部分があり熱貫流率は異なります。
これは、断熱材と木材の柱では熱の通り易さが違う為で、材料毎のこの熱の通り易さを表すのが熱伝導率【ねつでんどうりつ】と言う数字になります。
アルミは236、鉄は83.5、木は0.20、高性能グラスウールは0.038、ネオマフォームは0.020、乾燥空気は0.024という感じです。単位は、W/(M・K)。
数値が小さい程に、熱が通りにくく断熱性能が高いと言えます。
木材と比べると高性能グラスウールは、約1/5、ネオマフォームに至っては1/10と熱の通り易さが違います。
壁の熱貫流率は、石膏ボード、柱等の木材、構造用合板等の壁を構成する材料の総合評価と思ってください。
柱と断熱材の部分の熱貫流率が違うという事は、表面温度も違います。
この壁の中で断熱性の低い部分は熱的に弱点となるのですが、これを熱橋【ねっきょう/ヒートブリッジ】と言います。
熱橋を改善することで、それぞれの外皮の熱貫流率は低く(断熱性能は高く)することが出来ますので、対応策を考えます。
柱を木材以外の熱伝導率の低いものに換えるといっても、木材は構造部材の中では断熱性の良い材料ですので、木材のままです。
あとは、この木材の表面積を減らすかこの部分の壁の熱貫流率を小さくします。
表面積を減らす事は、柱を細くするという事で、強度的な問題が発生するので難しい。
残るは、熱貫流率を小さくするというのが残り、これが正解です。
その方法は、柱の外側に断熱材を追加する事になります。
実際は付加断熱というのですが、ここでは外断熱を追加するという風に考えてください。
外側に断熱材を追加するので、柱だけでなく断熱材の部分も厚みがまして全体的に断熱性能が上がります。
例えば、ネオマフォームを100mm、柱の間に施工した壁と、高性能グラスウールを柱の間に100mm、柱の外側に100mmの合計200mm施工した壁では、断熱材の部分の熱貫流率はほぼ同じになります。
しかし、柱の部分はネオマフォームの方は、柱100mm分の熱貫流率しかないのに比べ、高性能グラスウールの方は、柱100mmに高性能グラスウール100mmの熱貫流率になりますので、こちらの方が壁全体の熱貫流率は小さく(断熱性能が良く)なります。
建物全体の時と同様に、一部だけに断熱性能のよい材料を使うよりも全体のバランスを考えた方が良いという事です。