増築をしようとすると、問題になって来るのが法規に適合しているかどうかと言う事です。
新築当時は法規に適合していたとしても、その後法規の改正があって現行法規には不適合になってしまった建物を『既存不適格建築物』と言います。
この『既存不適格建築物』になってしまったら、すなわち、違法建築物ですぐに適合する様にしなければならない訳ではありません。
しかし、この『既存不適格建築物』に一定規模の工事を行う場合(繋げて増築する等)は、既存部分も現行法規に適合する様に工事を施す事が求められます。
現在は、この『既存不適格建築物』になってしまう法規は、いくつかありまして、構造部分(筋交など)の件、シックハウス(使用建材)の件、24時間換気の件等あります。
シックハウスの件は、合板などの生産に使われていたホルマリンから揮発するホルムアルデヒドという有害物質が問題となり、これを含むいくつかの化学物質が使わえる量の制限が掛かりましたが、一定年数が経過すると揮発して無くなる事から、特に建材の交換を迫られる事は無くなっている筈です。
24時間換気は、シックハウスの時に同時に施工された内容で、建物の外側に合板を張るケースが増えたことで気密性能が高まり、化学物質や二酸化炭素などによる空気汚染が問題となり義務付けされたと思います。換気扇と給気口と換気経路を考えれば良いので、問題にはなりにくいです。
増築する部分と繋がっている範囲だけ適用されます。
構造部分の件が一番大変で、特に昭和53年以前の建物の場合、基礎部分が問題になります。
断面がI型だったり、鉄筋が入っていなかったり、基礎が連続していなかったり、土台との緊結が確保できていなかったり、地面からの高さが足らなかったり。
耐力壁(筋交)の量も足りていませんし、当時は『バランスよく配置』としか表記が無かった為、配置に関しての規制はほぼ無いのと同じで、設計時に配置した筋違を、プラン変更などで違う所へ移動したりと言う事は当たり前のように発生していましたし、X、y方向それぞれの量が変わっていなければ金融公庫の検査でも合格できたのです。
完了検査を受けない場合も多かった為、建築確認図面と出来上がった建物のが違うという事は往々にしてあり、筋かいの位置も当てにならない事も多いのです。
現在は、配置に関しても検討方法が規定されていますので、現場で勝手に筋違の位置を変更する事は出来なくなっています。(監理者が責任追及されます)
さて、木造住宅の建築確認申請については、特例が設けられています。
建築士が設計する場合は、法規に規定する内容を建築確認申請時に添付しなくても良いというものです。
一番大きな規定が、耐力壁に関する規定で、その量、配置は図面に記入しなくても良いので計算しなくて良いと勘違いしてしまっている方々が一定数いるのです。
また、性能表示の規定で耐震等級が設定されていますが、耐力壁量だけを見ると等級1は、法規で求められる量(1.0倍)、等級2は1.25倍、等級3は1.5倍です。
性能表示を受けるのであれば、当然、目標とする等級を満足する壁量を確保しますが、そうでない場合は、コストに直結する話なので最低量で計画されてしまうのです。
そして、建築確認図面だけでは充足量は分からないのです。
近いうちにこの免除されている部分が縮小される事が、決まったようで、耐力壁量の計算書の添付が要求されるようです。
許容応力度計算などの構造計算を行って安全を確認している場合、耐力壁量はそれに従います。
構造計算に寄らない場合は、耐震等級3相当の壁量を確保する事が求められるようです。
現在の木造住宅の殆どが、外側に合板などの面材を張り、床面には厚合板を張る工法が主流になっているという事が、今回の特例の部分撤廃に繋がったのだと思います。
ただし、外側に張った合板を全て耐力壁にしてしまうと、バランスが取れない事もよくあるので、そこは設計者の判断で耐力壁にする合板とそれ以外を指定します。
計算を要求する事で、量だけでなく、このバランスを取る事が徹底されるのでしょうね。
で、もうお分かりだと思いますが、この特例免除の法規が施行されると、それ以前に建てられて構造計算を行っていない法規相当、及び1.25倍相当の耐力壁量の建築物は『既存不適格建築物』になってしまうという事です。
増築などをしなければ問題になる事はありませんが、今新築して、法規施工後に増築しようとすると『耐力壁が不足しているので、補強するように』と指導されるかもしれません。
今建てるのなら、気を付けないといけない所ですね。