外壁に外壁材を施工する際に、外壁材の方向によって、下地となる胴縁【どうぶち 】の向きも変わります。
窯業系サイディングが花盛りの現在ですが、その多くは横張りで施工されます。
サイディング本体の寸法が、455mm x 3030mmでこれを横にして、下から上へ張上げていきます。
そうすると、これを受ける胴縁は直交する方向に取り付けるので、柱と同じ方向の縦胴縁になります。
サイディングは以前、横張りにする場合は直接、柱や間柱に打ち付けていましたが、北海道で高断熱高気密住宅が研究開発されていく過程で、壁の中で結露して土台が腐朽してしまうという事象が発生し、この解決策として外壁の内側で通気して壁の中の水蒸気を外気へ放出する『壁体内通気工法』というものが、オープン工法として開発されました。
この壁の中での結露と言う現象は、高断熱住宅に限らず発生する可能性があった為、直接柱に留め付けられていたサイディングは胴縁で通気層を作ってそれに留め付けられることが、一般的となりました。
横張りで縦胴縁であれば、通気は上手くいくというのは分かると思います。
縦胴縁は柱と間柱に留め付けますから、910mmモジュールでは、455mm間隔で、1000mmモジュールでは500mmの間隔になり、胴縁が巾45mm程度ですから400~450mmの巾の空気層が出来上がる訳です。
一方で問題になるのが、サイディングを縦に張り付ける場合です。
窯業系サイディングが流行る前まで、サイディングというと金属系であり、他には金属のプリントと呼ばれる木の板の模様がプリントされたものや、物置などは小波板であって、いずれにしても縦張りでした。
なので、ベテランの大工では外壁の下地に胴縁(横)を高さの調整をしながら打つのは当然で、逆に窯業系サイディングの横張りで直接柱に打ち付ける事になんとなく(平らに仕上がらないので)抵抗があったと思いますし、縦の胴縁なんてのは打つ意味があるのか思ったかもしれません。
さて、横に胴縁を施工した場合の通気を考えると、縦胴縁に比べて明らかに上手くいくとは思えません。
横胴縁の場合の通気層のつくり方も考えられていましたが、柱の上で30mmの隙間を空けるとか、外壁の割り振りを意識して施工しなければなりませんでした。
また、その隙間を同じ柱に上から下まで作ってしまうと、その周辺の水蒸気しか排出出来ない事も考えられました。
そこで、縦胴縁を打ち通気層を確保し、横胴縁を取り付けてサイディングを縦に張る方法も考えられましたが、サッシが埋まってしまうという問題がありました。
そこで考えられたのが、胴縁の片面をえぐり取り、隙間を作り出す『エアホール胴縁」という製品です。
エアホール胴縁は、画期的な商品の様に見えましたが、当時はまだ柱面に合板を張る事が少なく、断熱材はグラスウールの袋入りで耳を柱の正面ではなく、側面に打ち付ける間違った施工方法が横行してたため、断熱材は外壁側に押し付けられて、エアホール胴縁のエアホールを埋めてしまう事もありました。
(断熱材を柱の側面に留め付けると、断熱材の室内側に通気層が意図せずに出来上がり、壁の中での結露はしないのかもしれないが、断熱材はその役目を殆んど果たさないので、この状態ではそもそも断熱材を入れる意味があるのかとも言える。夏、焼けた外壁の熱を遮断するという効果はあるが。)
現在施工している現場では、久しぶりのサイディング縦張りなので、久しぶりにエアホール胴縁も試してみようという事になりました。
エアホール胴縁は、打ち付ける面の状況によって裏表を変えて打ち付ける物なんですね。
以前使った時はそんな説明なかったので、繊維系断熱材で合板無しでしたが、抉りを柱側に向けて留めて付けました。
メーカーのサイトでの説明ですと、ボード系の断熱材に留め付ける場合は、抉られた面を断熱側にして留め付ける。
繊維系の断熱材の場合は、施工後膨張する事があるので抉られた方を外側の外壁材側に向けて留め付けるとありました。
抉られた部分が外を向くと、外壁の継ぎ目が抉りに来てしまうと施工に支障があるなと。
思いますが、留め付ける金具や、釘は縦に鉛直方向に並びますから、それに気を付けて取り付ければ何とかなると思います。
しかし、久しぶりのエアホール胴縁は、昔採用した時よりも抉りが浅くなっている気がします。
ちゃんと機能するのか心配になります。
ちゃんと機能するのでしょうが。