平板スレート。
一般的には、商品名の『コロニアル』という方が通りが良いようです。
薄いセメント板の屋根材ですが、これは天然スレートという薄い石の板を模した屋根材です。
かつてはアスベストを混ぜて作られていました。
アスベストは先日、京都のアスベスト訴訟で最高裁の判断がでて原告側(被害者側)が勝訴しましたが、体内に入ると分解されず肺がんなどの健康被害を引き起こす鉱物です。
安くて、耐熱性や耐久性に優れていて厚さ7mmのコロニアルを成り立たせるには、必要な材料でした。
しかし、世界的にその使用が禁止されている中、日本ではその後しばらく使い続けて多くの職人たちが苦しんでいます。
さて、最近のリフォームの多くは『カバー工法』といいますか、既存の上に重ねて施工する事が多いです。
屋根、外壁、床、玄関建具等々。
カバー工法の利点は、廃材が出ないという事がまず挙げられます。
廃材の処分費は年々値上がりしていますから、建物の寿命の時にまとめて・・という事になりますが、改修時点での費用は抑える事が出来ます。
また、解体を行うと工期が伸びるという事もあります。
例えば、玄関サッシの場合、以前はサッシの枠を外す必要があったので、外壁をサッシの周りだけ切断し最後に新しい材料で補修をします。
屋内側も同様です。
改修したことは見ればよく分かりますし、見た目がイマイチなんて事もありますし、雨仕舞の不安はぬぐいきれません。
その点、カバー工法の場合は、外壁を壊すことなく、現在の雨仕舞はそのままに見ためも良く仕上げる事が出来ます。
やや枠が大きく見える位ですが、それ程気になる事もないでしょう。
屋根や外壁も解体をして、新しい屋根材、壁材を施工するまでの間は雨漏りの心配や、防犯の心配が付いて回ります。
余程、下地に不具合が無ければカバー工法という事になるかと思います。
ただし、既存の上に新しい材料を重ねますので耐震性については、危険側になりますので、なるべく軽い材料を選ぶ等注意してください。
現在、コロニアルのカバー工法を検討しています。
築20年程度の丁度、コロニアルにアスベストが使われなくなった時期の建物。
補強材だったアスベストが使えなくなって、強度が落ちています。
屋根に上がってみると全体にひび割れが発生しており、角の部分が折れて落下している所もちらほら見受けられ、そろそろ何かしらの改修をおこなった方が良い状況です。
雨漏りなどは見受けられないので、カバー工法をおすすめしました。
カバー工法の場合、金属板を採用します。
トタン板と言うのは、もうしばらく前に使われることは無く、ガルバニウム鋼板と言うものが使われています。
芯が鋼板である事は変わらないのですが、メッキの成分が違います。
トタンは亜鉛メッキが施されていますので、亜鉛メッキ鋼板とも言います。
ガルバニウム鋼板は、メッキ成分の55%をアルミニウムを配合した亜鉛メッキを施し、耐蝕性などを向上させた鋼板です。
最近はこのガルバニウム鋼板の高性能版として、メッキ成分にマグネシウムを加えたSGL鋼板と言うものが製品化されています。
SGL鋼板は海岸近くでも使用できる位に耐久性が上がっています。
一般的にはまだまだ、ガルバニウム鋼板でしょうか。
しかし、徐々にSGLに切り替わっていく事でしょう。
屋根材メーカーによってSGL鋼板の製品もラインナップされています。
金属屋根で心配になるのは、『音』です。
雨音が気になるようになった。
そういった声が聴かれるように、既存の屋根材に密着する訳ではないので、0.3mm程度の金属板に雨が当たると音が気になる事もあるでしょう。
そこで、屋根材の裏にウレタンを取り付けて音を抑える製品があります。
ニチハの『横暖ルーフ』というものが、それに当たり、ガルバニウム鋼板とSGLが用意されています。
もうひとつ、一部の方に根強い人気のある製品があります。
ガルバニウム鋼板の表面に、天然の石粒を焼き付けた屋根材です。
メーカーの言うには、天然石が雨粒を分散し、音を抑制することが出来るという事と、天然石で表面を覆っているので再塗装が不要という2点がメリットとしてあげられています。
材料費は単純なガルバニウム鋼板よりもかかりますし、流通量が少ないので送料等経費も掛かりますが、長い目で見ると再塗装が不要であるというのはかなりメリットがあると考えられます。
トタンと違い、錆びる事は少なくなったガルバニウム鋼板ですが、表面の塗装は色あせたりしますし、塗装が劣化すると鋼板自体に雨が当たり、錆に繋がるという事もありますから、再塗装は必要になってきます。
SGL鋼板についても、ガルバニウム鋼板よりも耐久性があるんで、メンテナンスのサイクルは伸びますが、塗膜は劣化しますから必要になるでしょう。
屋根の再塗装をするとなると、足場を建てて行いますから、建物の規模にもよりますが50万円とか、その位は覚悟しなければなりません。
まぁ、大抵の場合は外壁のメンテナンスと同時に行う事になるでしょうから、足場を考えなくても30万円位はかかると思います。
もし、今の建物をあと30年使うつもりだという事になれば、カバー工法で石粒付き鋼板が4~50万円多くかかるとしても、その後30年は屋根についてはメンテナンスフリー。
ガルバニウム鋼板だと、1~2回のメンテナンス。
SGLでも、1回。
将来の負担は軽くてすみます。
リフォームは、今後どの程度の年数、その建物を使うかという事を、念頭にいれて考えたいものです。
ちょっと、蛇足ですが。
石粒付き鋼板の屋根材で、屋根材と既存の屋根の間に空気層ができるので断熱性能があがるといいますが、効果のほどは・・。
空気層があれば断熱性能は上がるでしょうが、室内にまで影響するような効果があるかと言うと、ま、無いでしょうね(個人的な感想です)。
屋根と室内の間には、小屋裏空間があり屋根面か天井面には断熱材が(ないこともありますが)あります。
小屋裏空間は換気口があり、外部と繋がっている場合が多いです。
輻射熱は空気は関係ないですし。
最近の家ですと、断熱材の外側に通気層を設ける事も(屋根面でも)多いので、なおさら屋根材の断熱性能と言うのはあっても無くてもという事になると思います。
建物側の断熱材も厚くなって(いるはず)ですし。
ガルバニウム鋼板に遮熱塗装が施されているものもあるので、そういったものを使うのが良いと思います。
遮熱は考えた方が良いと思います。
遮熱は、熱を遮断するもので、断熱材とはまた違うものです。
熱を反射する事で、内側に熱を伝えないものです。
タイベックにアルミを蒸着したタイベックシルバーという透湿シートがあるのですが、以前雑誌でこの手の遮熱シートは、それ自体では遮熱効果が認められるものの、実際に施工された状態になると大した効果が認められないという報告がありました。
小屋裏に通気層を確保する為に施工するのでメーカーに表裏を確認したところ、アルミ面を室内側にして、他の材料に接しないようにと言われました。
どういうことなのですかね。
金属、特にアルミニウムは熱伝導の高い材料ですから、他の部材に接すると熱を吸収して輻射熱を放出するとか、表面温度があがると遮熱効果に影響が出るとか、そういう事なんでしょうか。
詳しくは分かりませんが、遮熱という効果は認めますが、住宅で実際に高い効果を得るのは難しいと思っています。
更に蛇足ですが、袋入りのグラスウール、今は表も裏もプラスティックと言うか、ビニルというかそういったもので覆われていますが、かつては室内側はアスファルトを含浸させた紙で、屋外側はアルミを蒸着したフィルムでした。
紙の方は室内の水蒸気を壁の中に入れない為の防湿層。
屋外側のアルミは、屋外からの熱線を半分にする為と学校で教わった記憶があります。
アルミをいれると熱線を半分にしてくれると。
設置場所はどこでも良いとも。
それならば、2枚3枚と入れたら1/4、1/8になると思ったら、何枚入れても1/2だと言われました。
その時はどういう理屈か、・・今も分かりませんが、そんなものだと処理しました。
仕事を始めて、グラスウールのアルミフィルムはそういう事だと思っていましたが、ある時、切り替わって無くなってしまった時には、コストの問題なのかと思っていましたが、上で書きました雑誌の記事で、ほぼ無意味だったと十何年越しに知ったのでした。