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Q-1住宅 / 有限会社 カトウ工務店

地元に根差して40年。高断熱住宅Q-1.0住宅(キューワン住宅)の設計、施工。 翌朝も暖かな家づくりをしています。

耐震補強と耐震化率と今後の話。

耐震補強は、床・天井を解体しなくとも補強できるキットが販売されていますので、それを利用します。
このキットは、販売会社が実物大の試験を何度も繰り返して、国から有効だという認定を取得していますから、施工にあたっては制限がありますが、解体範囲も狭く状況によって1日に1~2カ所の補強できるので効率が良くなっています。

 本来、耐力壁は土台・梁・桁等の横架材【おうかざい】と柱に留付ける事が大前提ですが、認定品は横架材に直接面材を留付けずに耐力を発揮できるという製品ですから、認定品の施工には、注意が必要です。
その性能が担保される範囲は、実際の試験で確認された範囲になります。
セット品に含まれる金物や部材を使って、決められた寸法範囲を守って施工しなければ、メーカーとしては性能の保障は出来ないと言われます。
根拠がないですから、仕方がありません。


 余談ですが、このキットを使用するには販売するメーカーの講習を受ける必要があります。
しかし、現在、講習自体を行う予定がないメーカーもあったりします。
 耐震補強、普及していないですね。
 いや、もう終局と言えるのでしょうか。


 財団法人 日本建築防災協会が発刊していて耐震補強のバイブル的な『木造住宅の耐震診断と補強方法』は、2007年に従来の『木造住宅の耐震精密診断と補強方法』の改訂版として発刊され、同時に『木造住宅の耐震補強の実務』も発刊されました。
当時は、2015年までに住宅の耐震化率を90%にするように目指していたこともあり、一般診断方法に対応した耐震診断プログラムも開発され、広く耐震補強がされるようなりました。


 実際の耐震化率ですが、2013年(H25)で約85% だったので、途中2年繰り上げて2015年(H27)に90%達成を目標にするも、2018年(H30)で約87%と遅々として進みません。

 現在の目標は、2020年(R2)で95%、2025年(R7)でほぼ解消という事に修正されています。


 昭和56年以前の建物の数は、2020年では900万戸(予想)で、うち耐震性の無いものは250万戸とされています。
そして、2025年にはおおむね解消という事は、旧耐震基準で建築された建物でも築年44年になり、流石に殆どは建替えられるだろうという判断でしょうか。

 2023年現在では、耐震性の無い建物はどのくらいあるのでしょうね。


 と、この目標はあくまでも、新耐震基準が適用された後は耐震性が十分にあると仮定した話(一応、新耐震基準の有効性は阪神淡路大震災で証明された)であって、昭和57年以降の建物でも震災で倒壊してしまった物はあります。

 熊本震災では、2度の震度7が発生して、多くの被害を出しました。
その際に被害が認められなかったのが、性能表示の耐震等級3の建物です。
サンプル数は少ないですが、そのすべてが無被害と言っていいレベルでした。


 4分の1法という耐力壁の配置のバランスを確かめる基準が出来た時点で、昭和57年以降だから安心という事は既に言えなくなっていますし、熊本震災が発生して、建築基準法の耐力壁の基準を満たしているから安心(そもそも、満たしているから倒壊しないという意味ではないのですが)とも言えなくなっています。


 今後も耐震診断、耐震補強はまだまだ必要ですね。

 現在の耐震補強は、現行の耐震基準を満たす評点1.0を目指して行われていますが、もっと高い数値を目指すケースも出てくるかもしれません。
評点1.0を目指すのであれば、昭和57年以降の建物は何枚も補強する必要はありません。
耐力壁の量は足りているはずなので、バランスを見直すだけで済みますから。

 ただし、新基準が施行目前でそれ以降は、目指す評点も変わるのでしょう。

 また、補強によって耐震等級3相当を目指そうとすると水平構面の補強が必須となり、大規模な工事となる可能性が高いでしょうね。

 まぁ、とりあえずは、耐震診断を受けてみましょう。
どうするかは、それからです。
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小屋裏の換気。

小屋裏の換気は、こう夏が暑くなってくると、とても重要になってきます。 冬も大切なんですけど。

 小屋裏に湿気が滞留してしまうと、結露の発生が心配になります。
夏は特に外気の湿度が高いですから、換気が十分でない小屋裏の湿度も上昇しがちです。
梅雨時の高湿度で、昼夜の温度差が大きい時期は特に心配ですし、過剰に冷房をしている場合も心配になります。

 また、夏季は小屋裏内の温度が上昇し、天井を温めて室内に影響を及ぼしますから、この熱を排出して小屋裏内の温度を下げる事は、とても重要になります。

 小屋裏換気の必要量が定義されたのは、住宅金融公庫の仕様書が初めてだったと思います。
軒裏・妻・棟・換気筒の各方式により、天井面積の何%の有効換気孔面積が決められました。

 しかし、寄棟に一般的に採用されていた軒裏換気なんてものは、風が吹けば換気は行われるでしょうが、無風の場合には換気は期待できません。
空気の出入口が同じ高さにありますから。

 切妻の場合は、妻壁に換気口を付ければよさそうですが、単純な切妻屋根の場合、妻壁は2カ所で梁間が小さく、桁行が大きい場合は、十分な換気口が設置できるかどうか。


 換気筒は、まあ、採用されないでしょう。


 そこで、棟換気というものが一気に注目されるわけです。
軒裏の換気口を入り口とし、屋根のてっぺんに出口を設ける棟換気は、屋根面で温められた空気が軽くなって棟から出ていき、同時に軒裏から空気が取り込まれるという重力換気でも換気が行われるので、無風状態で換気が出来るのです。


 で、棟換気は当たり前のように施工されるようになりました。
正方形に近く棟の短い寄棟屋根でも、隅棟に取り付けられる換気部材が開発されたり、下屋や片流れ用の部材の開発も進み、小屋裏の換気状況は改善されています。


 屋根に登り梁を採用して、合板で水平構面を作った場合、そこが気密層になり屋裏の換気は必要なくなりそうですが、断熱材と屋根材の間には通気層を設ける必要があります。

 これは、屋根下地が腐朽してしまう危険が潜んでいるからです。


 この場合も棟換気が活躍しますが、合板の上に垂木を打ち野地を張り、てっぺんに棟換気用の穴を開けます。
垂木の間を空気が上昇してきて、棟から排出されますが、棟の垂木の処理はどうしましょうか。
垂木のてっぺんの取り合いは、棟換気で必要とされる上からみて巾30mm下げて打ちつけて、横方向に空気が移動できるようにして、基準の必要量の棟換気口を取り付けるのか、棟の全長に渡って棟換気口を設定するのか。

できれば、全長に渡って施工した方が、効率よく換気が出来るのは分かると思います。
基準は最低の基準なので、それを満たしていれば良いかというと、必ずしもそうではありません。


 通常の屋根でも、垂木の高さが邪魔をして棟換気口のない部分では、暖かな空気が停滞してしまう事は想像できると思います。

 屋根の一番高い部分が、一番高湿であるだろうことを考えれば、気温が下がらなくとも飽和水蒸気量に達して、それほど低い温度でなくとも結露が発生するかもしれません。
水蒸気は、外気に含まれているだけでなく、室内からも漏れ出てきますし木材からも蒸発してきますから。

 なので、棟換気は全長に渡って換気できるようにした方が、建物も長持ちすると思うのです。

上の断熱。

天井上の断熱は、断熱材を施工する部分によって3種類があります。

①天井断熱

 文字通り、天井の上に断熱材を載せる方法です。
断熱ライン内の気積が一番小さくなる方法なので、冷暖房の負荷を一番小さく出来る工法と考えられますが、マット状、ボード状の断熱材を隙間なく施工するのは難しく、吹込み工法で行うのが現実的でしょうか。
電気配線やダクト、埋込照明器具などが断熱材の中に埋もれるので後々のメンテナンスの為には配慮が必要になります。

②桁上断熱

 これは、梁・桁の上に断熱材を施工する方法です。
通常は、桁の上に合板を2階床の様に張り、その上に断熱材を施工します。
天井の上に断熱ライン内側の空間が出来る事により、電気配線やダクト配管、埋込照明などの気密処理が不要になって施工効率は良くなる面があります。
メンテナンスも気密層の内側で行えるので良いです。
断熱材は、弊社ではボード上のグラスウールか、マット状のグラスウールを採用します。
建て方の際に、小屋の足場が良くなるのも利点です。
壁と桁上の断熱材の取り合い部分が熱的に不利になるので、桁の上にもう1本桁を載せるなどの配慮が必要になります。

③屋根断熱

 文字通り屋根の直下に勾配なりに断熱材を施工します。
熱環境を検討する際の気積は一番大きくなります。

施工箇所は、野地上、垂木間、、垂木下、梁間があります。

 野地上は、荒野地板(【あらのじいた】野地板を2カ所に施工する場合の下の野地の事)の上に断熱材を載せて、通気層を確保して、上野地板(【上野地板】野地板を2カ所に施工する場合の上の野地の事。1カ所施工の野地板と同じ役割)を張って屋根を施工します。
外断熱の場合は、押出発砲ウレタンフォーム(以下XPS)を施工して通気層用の垂木を流して野地板となるのでしょうか、外断熱は興味が薄いので、分かりません。
通常は、荒野地の上に断熱材の厚さ+通気層分の垂木を流して、垂木間に断熱材を充填し上野地を張って屋根を施工します。

 垂木間は、2x10等の高さの大きな垂木を使いその間に(垂木の高さ分の断熱材)を施工します。
その際、通気層は垂木の間に作ります。
そうしないと荒野地を張って、通気層垂木を打って、上野地を施工する形になります。

 垂木下は、垂木間の様な大きな断面ではなく、通常の垂木を施工して通気層とし、その下に断熱材を施工する方法です。
垂木の下端には透湿シートを施工してあげると空気層がつぶれずに済みます。
断熱材を受けなければならないので大抵の場合、勾配天井の天井断熱とも言えます。

 梁間は、登り梁の時に使いますが、梁の間(から天井まで)です。
この場合、登り梁の上に施工する合板は厚板として、水平構面を形成する場合が殆どですので、通気層は厚合板の上になります。
厚合板は4周桁、登り梁、棟木に留付けますから、空気を抜く穴が施工できません。
軒の出、」ケラバの出が小さい場合(軒ゼロ)は、垂木の高さは通気層に必要な高さが確保できれば十分です。
軒の出やケラバがある場合は、ケラバを支える母屋がありませんから、垂木の施工に配慮が必要になります。

ウッドデッキの件。

和室前の広縁の外側に、アルミ製のテラス屋根を設置して、屋内から直接出られるようにうっでデッキを設置する事に。

 デッキに使う材料は無垢材です。
 床板はイタウバで。

 いつもは30mm厚の床板を、910mm程度の間隔で置いた大引に留付けていたのですが、今回は20mmの床板を大引の上に留付けた根太に乗せる事としました。

 根太分だけ部材点数が増えている。

 ウッドデッキには原則、輸入木材のハードウッドを使います。
国産材だと、檜辺りが候補に挙がるでしょうが、針葉樹だからなのか数年で腐朽が始まってしまいます。
我が家にも少しウッドデッキを設えてありますが、お試しもかねて最初に作ったのは、骨組みを国産材で檜を。
床板は米栂でした。
カナダ栂ですね。

 2年程度は持つかなと思っていましたが、期待を裏切ってもう少し持ちました。
しかし、床は簡単に交換できるので良いのですが、骨組みとなると床も当然撤去しますし、面倒なので、骨組みをハードウッドとして、床板は相変わらずのカナダ栂を採用してみました。

 床板のカナダ栂は、数年で腐朽(特にビス廻り)しまして、ぐらついてきて危ないので気が向いたところでダメなところだけを交換していきますが、骨組みは全く問題なさそうです。

 で、今回の構成は床板に、見栄えも良いイタウバという高級素材を使用して、骨組みの根太にはサイプレスを採用。
大引や束などはアンジェリーナという樹種を使いました。

 見えるところ、触れるところは肌触りの良い素材で、見えないところは耐久性とコストを鑑みてという構成にしてみました。

 ウッドデッキの組み方は何種類かありまして、ネットでよく見かけるのは床束を設置してから断面30mmx90mmとか105mmとかの根太受(大引)を高さを見ながら留付けて、それに床板を載せていくという方法。
高さの調整が楽で施工が簡単ですが、床束との接合がビスだけという耐久性と強度が心配になる仕様です。

 木工を行う身としてはやはり、大引は90mm角断面以上という事で90mm角です。

 これを、同じ断面の床束に乗せる、屋内の床と同じような構成で床組を行います。

 床束は鋼製でも良いし、共材でも良いでしょうね。
鋼製は、当然錆が出たりしますし、見た目もちょっと木製のウッドデッキとしては今一つかもしれません。

ただ、強度抜群で高さ調整も出来ますし、施工がとても簡単なのは良い事ですので、外周部の直接見える範囲は木の床束で、内部を鋼製とするのも良いかもしれません。

 いつもはここまでで床板を施工しますが、今回根太仕様にしたのは、ウッドデッキに用いられるハードウッドは、たまに激しく変形してしまう事があるからです

 天然素材ですから、仕方ないことですがこれを抑制する方法はないものかと、検討した結果です。

 床板30mm厚ならスパン1,000でもOK(と、最初に作ったときにどこかで見かけた)の事ですが、天然素材で個体差があるので、たまにたわみ量が大きな固体があったりします。

 激しく変形をしないように拘束するスパンを少なくし。 柔い固体でもたわまないようにする為に、今回は根太式にしてみました。 問題は見た目のビス量が多くなってしまう事でしょうか。  サイプレスという材料は、ハードウッドではないのですが、耐久性は抜群です。 加工性が良くて、見た目が檜に似ていてきれいな表面をしているのですが、大きな節が多い為、採用する際には注意が必要になります。
しかし、今回は根太。
下地材として使うので、問題は多分ないです。

 大引と床束はホゾで繋いで金物で留付けます。 天然木材は当然のように反っています。 屋内の床の様に、周囲の土台ががっちり固定されているようであれば、簡単にプレカットできるのですが、ハードウッドは文字通り固いですから、この反りは簡単には矯正できません。

なので、そのままの反りで、矯正はほどほどにして設置していきます。


そうすると必要になってくるのが、墨付けという作業です。
曲がった材が交差する部分の加工をするときに、基準となる線がないとどれだけ欠けば良いとか判断できないのです。

 大工さんの頭の中では、材木の芯を意識して墨付けをしています。
水平面も当然、高さ方向も材料の反りを鑑みながら高さ方向の基準墨を決めていきます。
高さ方向とか、水平方向に大きく変化のある材料などの芯の設定は、よく材料を観察して決めていきます。
その辺りを、許容範囲内の精度で納めていくのは楽しいものです。

 例えば、古民家のような丸太梁は芯を決めてそれを基準にして刻み、あのように曲がりくねっていてもきれいに組みあがっているのです。
今後の住宅では、丸太梁を採用するケースはなくなっていくでしょうが、個人的の欲求をかなえる為には、偶には丸太を使って墨付けしたいものです。

 基準墨を出して、 墨ツボを持って、たたき鑿で加工するなんて久しぶりですね。
でも、木工って面白いなと思えるひと時です。
面白いと思う瞬間は、職人によっても変わりますが、私の場合は墨付けと刻みと、その材をくみ上げる瞬間がとても好きです。


久しぶりの墨付けは、無駄に時間がかかってしまったようです。
刻みはサクサクと終わらせたいと思います。

省エネキャンペーン2023の事。

大型の新築・既存住宅の省エネキャンペーンが、始まっています。

 今回の内容は、

 ①子育て世代・若年世代の新築住宅取得に100万円。

 ②窓等の断熱リフォーム工事と合わせてバリアフリー等のリフォーム工事に対して200万円。

 ③エネファームや、エコキュート等の高効率給湯器の導入に15万円。


の3本立て。



 今までは、同様の補助金を各省庁がそれぞれバラバラに行っていましたが、今回は窓口が1つに統合されたの手続きが簡単になりました。


 あるリフォーム工事はこっちでは対象じゃないけど、こっちは対象になるよって事が分かりやすくなりました。



 例えば、給湯器。

③の補助金では、潜熱回収型のエコジョーズやエコフィールは対象になっていませんが、実は①の補助金の対象にはなっているのです。


 ①は子育て世代・若年世代の新築取得に目が行きがちですが、リフォーム工事となるとそれ以外の所有者の住宅も対象になります。


 また、①は特定の省エネ工事を行う事が要件になりますが、省エネ設備の導入はその要件に当てはまりますので、他に工事をおこなくても給湯器の交換だけで一つ目の条件は満たすのですが、もう一つ、補助金の額が5万円以上にならなければならないという条件がありますので、他の工事も合わせて行う必要があります。
内窓の設置で言えば、おトイレの高さ30cm程度の引違いの窓(省エネ基準)2カ所で条件を満たします。
 他には、手すりを取り付け(¥5,000-)、廊下と居室の間に段差がある場合に段差解消スロープを取り付け(¥6,000-)と上記の窓1か所で条件を満たすことが出来ます。
そこまで考えていると、必要な工事なのか、補助金をもらうための工事なのか分からなくなってきますね。


 今回は、②の補助金を受けてすべての窓の内窓設置、①の補助金の受けて玄関ドアと床壁天井のZEHレベルの断熱改修でしょうか。


これで最大230万円(一般世帯)の補助金が受けられます。


 床壁天井の断熱改修にもっと補助金が出れば良いですけどね。


しかし、高断熱化には高気密化も必要になってきますし、気密止めの施工も必須です。


 その辺りを知らない業者が単純に断熱材を入れただけ(今は流石にないでしょうが、昔は天井の上に梱包を解かない断熱材を載せてあるだけというのを、大手ハウスメーカー製の住宅で見たことがあります)の施工をしてしまったら、断熱効果は少ないし、躯体内部で結露して腐朽、シロアリ被害にまでつながるかもしれませんから怖いですね。

プロフィール

埼玉県鴻巣市で創業40年。 地域に根差し、お客様にとって最適な工事を提供出来るよう心掛けています。

HN:
加藤茂貴
性別:
男性
趣味:
コンガ、ジャンベ等パーカッション演奏
自己紹介:
会社名称:
 有限会社 カトウ工務店
 (1級建築士事務所併設)
所在:
 埼玉県鴻巣市松原1-20-10
tel/fax:
 048-541-1014 / 541-1017

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