忍者ブログ

Q-1住宅 / 有限会社 カトウ工務店

地元に根差して40年。高断熱住宅Q-1.0住宅(キューワン住宅)の設計、施工。 翌朝も暖かな家づくりをしています。

平板スレート。

平板スレートという屋根材。
商品名で言うと、コロニアルの方が通りが良いでしょうか。

ヨーロッパで使われている薄い板状の天然スレート(天然石)をセメント板で模したものです。

かつてはアスベストを添加して補強し、耐久性を高めたもので20年前後の耐久性があると説明していましが、2005年頃にアスベストを添加した製品は生産を終了しました。

 コロニアルは、窯業系サイディングと同じようなつくり方なのでしょうね、オートクレープ養生(高圧高湿)してセメントの結晶化を強固なものにするという方法です。

 兎に角、厚さ5mm程度のセメント板に人が乗っても割れないというのは、アスベスト恐るべしですね。

 アスベストが使えなくなると、他の補強方法をメーカーは模索しましたが、その当時の製品の強度ダウンと言ったら酷いもので、10年も持たずにひび割れてしまうなんて事が多発しました。
現在はアスベストが使えなくなってから20年近く経過していますので、いくらかマシになっている筈ですが、それでもアスベストを使えた頃に比べて同等とはいかないのではないかと思っています。

もともと価格の安さも手伝って、建売を中心に多く採用され、現在も採用件数は多いです。
ただ、他の屋根材に比べると耐用年数が短い事が欠点です。
メーカーは再塗装は不要だという態度であるはずですが、塗装が剥げて苔むしてしまう屋根材は正直みすぼらしくなってしまう為、再塗装を10年程度のサイクルで行う事になり、20年前後でやはり葺き替えやカバー工法を行う必要が出てきてしまうのです。
初期投資は低く抑えられますが、長期的に見るとメンテナンスに費用が掛かってしまう屋根材です。

 住宅では10年、20年という話が良く出てきますが、日常では長い年月と感じますが、建物にしてみれば短いと言えますので、良く考えておかなければなりません。

 カバー工法は通常、金属屋根材を上に重ねて行います。
スレート板の上にスレート板を重ねるという方法もなくもないでしょうが、構造的には全くお薦め出来ません。

 スレート板は設計上、『軽い屋根』という分類で構造設計を行いますが、それ程軽い訳でもなく2重に葺いたら『重い屋根』に分類される瓦屋根と比べても重くなるでしょう。
すなわち、耐力が不足する危険性があるのです。
特にかつての建売の場合、コストダウンが優先されますから、耐力壁も最低限であったり、筋かいのバランス(左右)も考えられていない事も多いのです。
現在の建売のその多くは、外部に構造用合板を張ったりして耐力的には向上していますから、一概に駄目とも言えませんが、いずれにしても初期の設計では『軽い屋根』でされていますから、カバー工法であれば金属屋根材一択と言ってよいでしょう。
新たに載せるので重量増は免れませんが、一番、重量増の巾が小さい(=耐力的に危険度が低い)のです。
 葺き替えと言う選択肢を取る場合は、コストが大きくなりますが、やはり金属屋根にする事で重量減で体力的に有利になります。
スレート板で葺き直すとコストが大きくかかる割に性能的には変化なしで、再び10年後の塗替え、20年後の葺き替えかカバー工法かで選択を迫られるという事になります。

 聞いた話では、アスファルトシングルの採用例が増えているようです。
確か、ステープルで留め付ける屋根材。
軽くて多少の曲面にも対応できる屋根材。
屋根の下葺きにアスファルトルーフィングを敷き込みますが、それに近いものと認識しています。
紙や不織布等にアスファルトを染み込ませて、表面に着色したような屋根材かな?
材料コストが上昇して下がってこないので、コロニアルよりも安価なものに向かったという事になるのだと思います。
PR

基礎廻りの配管。

住宅性能表示を利用してと言うよりも、長期優良住宅を設計すると立ちはだかる壁の一つに設備配管の取り扱いがあります。
要求を達成しようとしつつ、見た目を従来通り配管が見えないように施工しようとすると、難しいのです。

 配管の点検、交換等のメンテナンスが簡単に出来るように求められています。
給水、給湯配管でいうと現在は、さや管と言う被覆管が付いた架橋ポリ配管が主流になっています。
硬いですがホースのような材料なので、昔の塩ビ管や鉄管を使っていた頃の様にエルボやチーズを使って配管していくなんて事はしなくなりました。
ネットワークの配線に似ていまして、ハブがあってそこから1台ずつ機器をつなぐ様なかんじです。
配管の場合は、大元の配管をヘッダーにつないで、必要な数だけ分岐させてそれぞれの水栓につなぎます。
ヘッダーから取り出された配管を途中で分岐する事はしません。
給水給湯共に水圧がかかっているので、勾配という考え方はありませんし、細い管なので割と自由に配管が出来ます。
配管の交換は、さや管を残して中の配管を交換する事で完了する・・といわれています。
その為には極端な曲げや、サドルでの固定に注意する必要があります。

 一方、排水管の場合は、塩ビ管でエルボやチーズを使って配管をしていきます。
排水は重力を使って流すので、流す方向に勾配を付けてあげなければ途中で停滞してしまいます。
1階の設備の殆どは、床下に配管を出しそこから屋外に出しますから、どこかで基礎を通り抜けなければなりません。

 以前は、べた基礎であればスラブに潜り、外周部の捨てコンクリートの上、地面よりも下の土中に出てくるように配管していましたが、これでは将来、配管の更新が出来ない(引き抜けない)ので長期優良住宅では認められていません。
この解決策として、給水管と同じようにさや管というものを配管の外側につけて配管とコンクリートが直接くっつかないようにする方法があります。
内部管に塩ビ管を採用すると、途中でどうしても曲りのジョイントが必要でこれが引っかかりますから、内側が平滑な蛇腹管を採用します。
まぁ、それが排水管用のさや管なのですけど。

 また、基礎の立上り部分を通り抜けることは配管の更新が比較的簡単に出来ると認められているので、さや管を使わず直接塩ビ管を配管出来る為、宅内のスラブ上に配管されて外部に出す方法もあります。
この場合、配管が屋外で露出してしまうので、見た目的には今一つですが、コストが掛からず将来の更新のしやすさ、露出している部分の破損など発見が早い等の利点が挙げられます。
2階のトイレや化粧台の場合は、2階床下で外壁から屋外に出て、縦配管で地面にはいる事が多いです。

 べた基礎の宅内のスラブの高さは、外部の地面から5cm程度高くなっています。
これには理由がありまして、土中の水分は低い方に上がって来る為、必ず宅内を高くする必要があるのです。
そうしないと床下の湿度が高くなって、じめじめで、土台の腐れが発生したり、シロアリを呼んだりしてしまう訳です。

5cmというと十分なような、そうでもないような。
何もなければ充分ですね。
3cmという物件も見たことがあります。

 以前は、建物の周囲にはコンクリートで犬走を作りました。
しかし、この範囲は給排水の配管が埋まっていて、漏水や排水の停滞などが発生した場合、コンクリートを壊して復旧するという手間が発生してしまいます。
また、北側の狭い部分は空き巣などが侵入し易く防犯上心配な部分です。
土などの汚れがつかづ、足音もしない事からあまり好ましくないと言われます。
あとは、コスト。
以上の点から、近年では犬走は打たずに撤去・復旧が簡単な砂利や音が出易い防犯砂利などを敷き込むことが多くなりました。


 先日、お伺いしたお宅は、大雨が降ると床下に水が入ってくるというご相談でした。
水が入って来るのは、台所と洗面所と。

 基礎はべた基礎、外部はお客さんが施工した砂利敷き。
排水管はべた基礎のスラブ上を配管されて外周部を貫通し、屋外に出てからエルボで土中に潜っています。

 べた基礎のスラブは、外周部の地面よりも高くして施工されていた筈です。
しかし、お客さんがご自分で砂利を撒いたことから、地面が高くなってしまい、スラブとの高低差が小さくなり、大雨の時には水たまりが出来てスラブより水位が高くなって浸水したと予想しました。
基礎の屋外側では、排水管のエルボに地面がくっついていましたし。
 施工中に発生する金属製型枠を固定するセパレーターからの浸水も疑いました(ゼロではないでしょう)が、コンクリートのシミを見ると排水管周辺からひろがっているので、ここからの浸水と判断しました。

 購入当時、外周部は土だったようです。

 本来なら土の上に砂利を敷く際には、砂利の厚さ分より少し薄く土を取り除きます。
そうすれば、地面の高さは高くはなりません。
時間が経つと、砂利の隙間に土が入り込んで高さが下がりますので、必要ならば追加で砂利を入れます。
 土を取り除いたら防草シートを敷き込んであげると砂利と土が混ざるがなくなりますので、高さが下がる割合も減ります(配管のメンテナンスも楽)。
ただし、この場合は砂利が落ち着かない(移動して厚さのムラが出来やすく防草シートが露出する事もある)ので10cm程度の厚さで敷き込んであげると良いです。

 最近の建売は、1階の配管が地面の上で基礎を貫通して出てきている物を良く見かけますので、一般的になってきたと思います。
今後増えていくでしょう。
建物周囲に砂利を撒いたり、敷石を置いたりする際には気を付けましょう。

 余談ですが、基礎にくっつけて花壇をつくる方がいますが、これは絶対に止めてください。
配管がなくても、土とコンクリートが接触しており水やりを行うので、コンクリートがずっと湿っている状態となります。
湿ったコンクリートに近い土台の含水量が増えて腐りやすくなります。
また、土と土台(建物本体)の距離が近くなってシロアリの侵入の危険性が非常に高くなります。
建物の周りは、空気が通るように開けておくのが、鉄則です。

有孔板を使った軒裏換気口。

以前、軒裏換気口の話を、恐らく軒裏換気口の話だったと思いますが、きっと脱線して違う話になっているかもしれませんが。

 有孔板を使った小屋裏換気孔を、外装の再塗装の時に塗料で埋まってしまった物件を見つけましたので、画像を上げておきます。
この現場は、ケイカル板の有孔板ではなく合板の有孔板でした。




 有孔板の軒天は↑こんな感じです。
新築の際の塗装でも、気を付けないと問題になりますが、塗替えの際には特に気を付けないとこの穴を塗料で塞いでしまう場合があります。
上の画像をよく見ると、穴が無いところがあったりします。
拡大してみます。


 完全に埋まっている所もありますし、穴が小さくなっている所もあります。
2回、塗替えているそうです。
新耐震基準(昭和56年6月)前の建物で、40年以上経過した建物ですから塗替えが2回と言うのは少ないと言えなくもないですが。

 合板の有孔板は、特に穴が小さいように思います。
ケイカル板の有孔板は、メーカーと生産時期によって穴の大きさや間隔が異なります。
と言う事は、小屋裏の換気量計算をする際に、有孔板の開口率が問題になってくるはずですね。
調べると
チヨダウーテ製は、3.07%
エヌビーエル製は、4.4%~7.8%
あくまでも3x6の大きさ一枚で、下地によって塞がれてしまう部分が無いものとしての開口率。
実際の施工状況によっては、変わってしまうものでしょう。
将来のメンテナンスで塞がる事も鑑みて、余裕を持って設計したいものです。

 軒天換気に有孔板を使う(使われている)場合には、塗装に気を付けないといけないというお話でした。

除湿。

今年の夏、我が家ではエアコンと共に除湿器が大活躍でした。

分かっているようでわかっておらず、湿度は大事と痛感しました。

 除湿器は、コンプレッサー方式が夏の除湿には良くて、エネルギーの消費も少ないです。
他の方式では、吸湿した吸湿材を乾燥させるためにヒーターで温める方式の物もあります。
この方式はエネルギーも使いますが、室温が上がってしまうという夏場にはとても使えない欠点があるのです。

 コンプレッサー方式は、エアコンの室外機のような物で、空気を圧縮して水分を絞りだし、その後解放すると水分の抜けた乾燥した空気に変わっています。
圧縮する時に熱を発生しますが、解放した時には冷たい空気になっていますのでプラスマイナス0。
気温に変化は殆んどありません(機械本体の稼働による発熱はあります)。

 結構な量の水が出ますので、タンク容量は大きな物を選ぶのがお薦めです。
エアコンの設定温度を、1~2度は上げられる筈です。

増築のお話。

増築をしようとすると、問題になって来るのが法規に適合しているかどうかと言う事です。

 新築当時は法規に適合していたとしても、その後法規の改正があって現行法規には不適合になってしまった建物を『既存不適格建築物』と言います。

 この『既存不適格建築物』になってしまったら、すなわち、違法建築物ですぐに適合する様にしなければならない訳ではありません。

しかし、この『既存不適格建築物』に一定規模の工事を行う場合(繋げて増築する等)は、既存部分も現行法規に適合する様に工事を施す事が求められます。

 現在は、この『既存不適格建築物』になってしまう法規は、いくつかありまして、構造部分(筋交など)の件、シックハウス(使用建材)の件、24時間換気の件等あります。

 シックハウスの件は、合板などの生産に使われていたホルマリンから揮発するホルムアルデヒドという有害物質が問題となり、これを含むいくつかの化学物質が使わえる量の制限が掛かりましたが、一定年数が経過すると揮発して無くなる事から、特に建材の交換を迫られる事は無くなっている筈です。
 24時間換気は、シックハウスの時に同時に施工された内容で、建物の外側に合板を張るケースが増えたことで気密性能が高まり、化学物質や二酸化炭素などによる空気汚染が問題となり義務付けされたと思います。換気扇と給気口と換気経路を考えれば良いので、問題にはなりにくいです。
増築する部分と繋がっている範囲だけ適用されます。
 構造部分の件が一番大変で、特に昭和53年以前の建物の場合、基礎部分が問題になります。
断面がI型だったり、鉄筋が入っていなかったり、基礎が連続していなかったり、土台との緊結が確保できていなかったり、地面からの高さが足らなかったり。

 耐力壁(筋交)の量も足りていませんし、当時は『バランスよく配置』としか表記が無かった為、配置に関しての規制はほぼ無いのと同じで、設計時に配置した筋違を、プラン変更などで違う所へ移動したりと言う事は当たり前のように発生していましたし、X、y方向それぞれの量が変わっていなければ金融公庫の検査でも合格できたのです。
完了検査を受けない場合も多かった為、建築確認図面と出来上がった建物のが違うという事は往々にしてあり、筋かいの位置も当てにならない事も多いのです。

現在は、配置に関しても検討方法が規定されていますので、現場で勝手に筋違の位置を変更する事は出来なくなっています。(監理者が責任追及されます)

 さて、木造住宅の建築確認申請については、特例が設けられています。
建築士が設計する場合は、法規に規定する内容を建築確認申請時に添付しなくても良いというものです。
一番大きな規定が、耐力壁に関する規定で、その量、配置は図面に記入しなくても良いので計算しなくて良いと勘違いしてしまっている方々が一定数いるのです。
また、性能表示の規定で耐震等級が設定されていますが、耐力壁量だけを見ると等級1は、法規で求められる量(1.0倍)、等級2は1.25倍、等級3は1.5倍です。
性能表示を受けるのであれば、当然、目標とする等級を満足する壁量を確保しますが、そうでない場合は、コストに直結する話なので最低量で計画されてしまうのです。
そして、建築確認図面だけでは充足量は分からないのです。

 近いうちにこの免除されている部分が縮小される事が、決まったようで、耐力壁量の計算書の添付が要求されるようです。
許容応力度計算などの構造計算を行って安全を確認している場合、耐力壁量はそれに従います。
構造計算に寄らない場合は、耐震等級3相当の壁量を確保する事が求められるようです。

 現在の木造住宅の殆どが、外側に合板などの面材を張り、床面には厚合板を張る工法が主流になっているという事が、今回の特例の部分撤廃に繋がったのだと思います。
ただし、外側に張った合板を全て耐力壁にしてしまうと、バランスが取れない事もよくあるので、そこは設計者の判断で耐力壁にする合板とそれ以外を指定します。
計算を要求する事で、量だけでなく、このバランスを取る事が徹底されるのでしょうね。

 で、もうお分かりだと思いますが、この特例免除の法規が施行されると、それ以前に建てられて構造計算を行っていない法規相当、及び1.25倍相当の耐力壁量の建築物は『既存不適格建築物』になってしまうという事です。
増築などをしなければ問題になる事はありませんが、今新築して、法規施工後に増築しようとすると『耐力壁が不足しているので、補強するように』と指導されるかもしれません。

 今建てるのなら、気を付けないといけない所ですね。

プロフィール

埼玉県鴻巣市で創業40年。 地域に根差し、お客様にとって最適な工事を提供出来るよう心掛けています。

HN:
加藤茂貴
性別:
男性
趣味:
コンガ、ジャンベ等パーカッション演奏
自己紹介:
会社名称:
 有限会社 カトウ工務店
 (1級建築士事務所併設)
所在:
 埼玉県鴻巣市松原1-20-10
tel/fax:
 048-541-1014 / 541-1017

フリーエリア