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Q-1住宅 / 有限会社 カトウ工務店

地元に根差して40年。高断熱住宅Q-1.0住宅(キューワン住宅)の設計、施工。 翌朝も暖かな家づくりをしています。

袋入りGWの施工。

再びプレハブ建物の内装を施工中。

 前回は、40mm厚のパネルの骨組みに50mmのHGW16kを充填し、付加した65mmの間柱にも50mmのHGW16kを充填して、0.2mmの防湿シートを施工しましたが、今回は予算の都合により袋入りGW90mmを、前回と同じ軸組構成に充填していきます。

 パネルの骨組みは、縦の桟が大凡600mmピッチで入っています。
そこへ、455mmピッチで間柱を付加して袋入りGWを充填しますから、いろいろな事を諦めなけらばなりません。
壁の中の空気を移動させない事が高断熱の大前提ですが、それを実現するには、このプレハブ建物は難しすぎます。
そもそも、気密も断熱性能も考慮されていない、ローコスト重視の外側だけの建物をどうこうする事は無理なのです。

が、そんな事よりも今回は、久しぶりの袋入りGWの施工しづらさを実感しました。

 在来軸組工法で、設備関連の配線、配管が無い間柱+間柱の間に充填するのは、とても楽ちんな(断熱性能や気密性能は考慮せず)袋入りGWですが、設備関連の配線、配管があったり、筋かいがあると途端に面倒になります。
本音で言うと、不良品じゃないのかってくらいイライラするのです。

 何がイライラさせるかと言うと、表面の防湿層のペラペラでタッカーで留め付けてもすぐに破けるフィルムと、裏側の更にペラペラのフィルムの存在。
カッターナイフで切断すると、GW本体は割ときれいに切れますが、2枚のフィルムがとても邪魔をしてくれます。
GWを切断しているとカッターナイフの刃は、すぐに切れ味が悪くなるのですが、そうするとフィルムの切れづらさが更にひどくなる事です。
しかも切断したこのフィルムがとても邪魔で邪魔で。

防湿フィルムの方は、まだましです。
弱すぎるところが難点で、GW本体と接着されている部分を剥がすと、本体の表面が荒れてしまう事、GWが張り付いて残ってしまったものをこすって取らなければならないのが面倒ですが。
裏のフィルムは、本体の保護を通り抜ける風邪から保護する為にあるのでしょうが、高気密高断熱を目指すのなら、無用の長物です。

 結果、施工し易さを考えると一番いいのは、フィルムを分離して本体を充填して、裏のフィルムは捨てて、表面の防湿フィルムを張り付けるという事に行き着きます。
しかし、それならば袋無しのGWと後張りの防湿フィルムにする方が、格段に断熱性能は向上するし、気密性能も段違いとなります。
防風の事はあれですが。

 久しぶりに施工して、以前は当たり前だった袋入りGWを壁に施工する理由が今はすっかり分からなくなっていました。
こんなものは、メーカーは販売する事を止めてしまえば良いのにと、本気で思うのです。
これを完璧に施工して高気密高断熱住宅を作る事が出来る人がいたら、本当に尊敬します。
これを使っている場合、高気密高断熱住宅を作る事は出来ないでしょう。
特に気密は難しすぎます。

 また、今回間仕切壁にも事情で施工しました。
こちらは構造的には関係のない壁の為、筋かいは無く、電気配線位があるだけですので、施工は比較的楽できれいに納まったと思います。
しかし、裏側から見るとGW本体が裏のフィルムに引っ張られて厚みが不均一であり、間柱側は丸くなってしまっていたり、長さが1350mmなので継ぎ目の部分もあれです。
裏から見るという機会はなかなかありませんが、見てみると問題点がはっきりとします。

■間仕切壁防湿フィルム側


■間仕切壁裏側


■間柱際はフィルムがある為に丸くなる
■継ぎ目部分は、防湿フィルムと裏のフィルムを剥がして突きつけているので割きっちりとくっついているが、剥がさないとここも丸くなって厚みが変わる。


■柱-間柱間で巾を詰めた部分は、割ときっちり納める事が出来る。


袋入りのGWでも、気密性能を重視した気密フィルムが厚いものも用意されています。
こちらは高性能GWになるのですが、こちらも基本的に施工しづらいのですが、フィルムが厚いので剥がす時に破ける心配は少なくて済みます。
しかし、間柱-間柱の製品と、間柱-柱の製品で印刷内容は違いますが、フィルムの巾は一緒の為、間柱-柱に施工するとフィルムの弛みが酷く、入隅に施工する際は受け木を入隅柱に取り付ける関係で柱側のみフィルムを剥がしますが、フィルムが異常に残るので嫌になります。
また、フィルムが厚く、455mmピッチで重ねていくのでとても嫌になります。
これを施工後に天井の下地を組みますが、野縁の墨を打つのが難しい。

 別張りの防湿シートを採用すると、シート自体が透明なので先に野縁の墨を木下地に打って置けるのです。
留め付けるのも下地が良く見えるので外す事もありませんし、外れてもすぐに確認出来ます。
袋色の防湿フィルムは大抵白色で下地の状況は手探りで探るしかありません。
色々と不満が募る製品です。


 袋入りGWを、窓下など長さが短い場所へ施工する場合に、国が行っている断熱講習会では、施工する部分の長さよりも留め付ける耳を作る為に、長く切断して、GWのみを切り取って耳を作るという事を言っていますが、これをやるとGWのごみが沢山出てしまいます。
それならば、フィルムをはぎ取って中身を寸法通りに切断してフィルムを少し長めにして別に施工する方が、ごみが少なくなります。
留め付ける為の耳を作る為にゴミをたくさん出すのはいただけません。
裏側のフィルムをどうするかが課題ですが、気流止めがされている壁の中に施工するのであれば、別に裏のフィルムは必要ないので捨ててしまって良いでしょう。
 従来の壁の中を風が吹く建物の場合は、裏のフィルムを余裕を持たせて先に取り付けて、GWを充填し、最後に防湿フィルムを施工する事で対応できると思います。

 因みに、新住協では防湿フィルムは乾燥木材で30mm以上抑える事となっています。
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造作家具~床から浮いた家具~。

我が家の収納家具は、自分で作る事が多いです。
子供たちの机も作りましたし、子供部屋を二つにした内部の造作と、家具も色々作りました。

 昨年のGWは、TVの位置を変えて、PCもデスクトップからノートに変え、机を造る事になったので家具作りです。


 最近のメーカーのCMでも良く見ますが、造作家具は床から浮いているものを良く見かけます。
既製の置き家具ではなかなか実現出来ない、造作家具ならではではないでしょうか。
TV台は床から浮かせることに決めました。

 ブラウン管では考えられないですよね。
ブラウン管の24インチワイドテレビで、70kgとかありましたから。
今の液晶テレビは本当に軽くなりました。
50インチで20kgないのですから。

 自宅の家具作りは、正直億劫なので兎に角シンプルです。
扉も引出しも付けたくないのです。
若い頃はそういう事もしていましたが、今はもう箱だけが良いのです。
その後、必要に応じてカスタマイズしていくという方向です。
今あるものに合わせて細かく区切ったところで、数年で納める物が変化すると使いづらくなってしまうことも良くあります。
自由に作れる造作家具だからと言って、やはり収納は余り作り込み過ぎない方が良いと思います。
 

 床から浮いた家具を取り付けるには、下地がどうなっているかを知らなければいけませんし、強度があるかないかという事も判断できなければなりません。
必要に応じて、壁材を剥がして補強するという事も、自宅ではそこまではなかなかやりませんが、お仕事の場合は行う必要もあります。

 浮いた家具は、壁に取り付けますから、置き家具よりも箱の強度に気をつけます。
”兎に角シンプルに”ですから、今回も間仕切なしの長方形の単なる箱です。
腰壁に杉板が張ってあるので、それを活かす意味もあって背板も付けません。

 腰板が杉板ならどこでも留められるでしょう?
と思うかもしれませんが、腰壁に使われている無垢板は9mm程度の厚みが多いのです。
流し台の吊戸棚等は、30mm以上の板か、12mm以上の合板でというのがメーカーのお決まりの下地の指定です。

 無垢の板で合板と同じ強度を出すのであれば、合板の2.5倍以上の厚みが必要なのです。

 そう考えると、無垢板でしかも杉板となると9mmでは軽いものは良いですが、テレビ台となるとやはり間柱を探して取り付ける事になります。
これを怠ると、最初は良いですが時間と共に落ちてしまう事でしょう。


 浮いた家具にすると、お掃除がなんとなく楽になった気がします。
本来家具の中である部分まで、掃除をすることになるので面積的には増えますが、そこに荷物があっても移動し易いですし、部屋の平面的な凸凹が無くなるので掃除機も掛け易くなります。


 先日、東北地方で地震がありました。
鴻巣市は震度4でしたが、床から浮かせた家具は取れる事もなく、ビスで転倒止めを施したテレビも無事でした。
地震対策として、造作家具は優れているなと改めて感じました。


 2月末から3月にかけては、子供部屋のリフォームをしなければなりません。
以前施したリフォームから8年が経過しようとしています。

 流石に3畳の子供部屋では物が収まらず、スチール製のロフトベットは揺れるそうで、いやだという事になりました。
既に、片方の子供部屋はロフトベッドを撤去し、床に寝ていますが、こちらはもともと押入がある方だったので衣服などは押入に仕舞っています。

 もう一部屋をリフォームするのですが、収納量の確保とベッドの設置、断熱性能の向上、プライバシー(音)の向上が目標として設定されました。
ベッド下の収納、本棚、机、いろいろなものの収納場所など、納まるのかどうか・・。
実際、ベッドと言ってもマットレスを置くと収納の高さがどんどん低くなるので、床を作って布団かなと思っていたりします。
この床を座面として机を使えたらよいなとか。
どうせもう何年もいないのだろうから、多少物の出し入れは力技でも良いかとか。
どうにか簡単に出来ないかと考えています。

 ここでも床から浮いた収納が大活躍する事になります。

床面は限られていて、ベッドと通路と机で終わります。
壁の上の方にも収納を設定しないと収まりきらないのです。
その為に前回、和室の壁のままだったのですが、これを合板で大壁に変更してあちこちに箱をくっつけようとしているのです。

トイレの改修。

長年使い続けた便器。
陶器製のタンクの内側に断熱材が施された、表面結露を抑えた防露タイプと呼ばれる便器。
もうそれだけで、年代物と言えるでしょう。

 現在は、大の方で5リットルしか水が流れない節水タイプが主流です。
タンクの外見は陶器のままの物もありますが、蓋を外して見るとポリタンクが内側に入っています。

 水量が少ないこのタイプの便器は、水道代がお安くなるという利点はあるものの、既存住宅に採用すると、屋外の排水の勾配が様々なものの沈下で狂っている事もあり、汚物が途中に留まってしまい流れなくなってしまう事もあります。
それでも、現在はそういう便器しか手に入らないので仕方ありません。
万が一問題が発生した時は、屋外の配管を直すしかありません。



 洋式便器で良く言われるのが、床と便器の間から水が出てくるというもの。

 便器の内側でひびが発生し、漏水しているんじゃないかとか。
排水管との接続部分から漏水しているんじゃないかとか。

 そういう風に心配される方も多いですが、多くの場合、これはおしっこです。
男性が座って用を足すときに、男性自信を下に抑えないと便器と便座の間から外に出てしまい、便器の外側を伝わって床と便器の間に入り込むのです。

 それが、あたかも内側から浸み出てきたみたいに見えるのです。

 なので、水が出てくるというのは便器の手前側に集中しています。

 また、便器の手前の部分をよく見ると、おしっこが流れた跡があるのです。


 こういうことがあるので、トイレの床は木質系の物よりもシート系の物の方が、掃除も楽ですし、下地へのダメージも防いでくれます。

 木質系の床材で施工をすると、ジョイント目地におしっこが浸みこんでくろずみが出てきます。
それでも木質系でと言う場合は、24mm厚とか、厚い無垢材を採用すると目地が深いのでそれ程気にならないかもしれません。

 また、合板系の床材を使うと表面が膨れ上がって来ることがあります。
こうなると便器を外して床を直すしかなくなってしまいますので、やはり床材はシート材が後々面倒が少ないかなと思っています。

 タイルや石という選択肢もありますが、その場合は目地の黄ばみが気になりますので、黒い目地にし、タイル自体も濃色の物を採用する事になるかもしれません。

 便器メーカーから、便器の下に敷きこむセラミック板があるので、そういったものを採用するのも手です。
段差が出てしまうのが難点ですが。


 で、合板系の床板のおトイレ。
男性が3人のご家庭。

 床がそれは無残にも膨れ上がって、剥がれてしまっています。
かなり染み込んでますから、臭いもそれなりに。

 便器は最初に言ったタイプの大量の水で流すタイプのもの。
床の改修と、便器の交換と、壁がプリント合板で小学生の男の子が良くおしっこを引掛けてしまうそうなので、腰壁にアイカのセラールを張る事にします。

 床の改修が入るので、排便管の移動も出来るので便器はリフォームタイプではないものを採用します。
リフォームタイプの排水ソケットを見ていると、横引き管の部分がとても心配になるので、床まで直す場合は、排便管も移動する様にしています。

 また、換気扇が無く冬でも用を足した後に窓を開けたりしているので、トイレがとても寒くなってしまうようです。
照明と連動する様に換気扇を取付、窓は単板のアルミサッシなので、この部分は樹脂板ではめ殺す事もお薦めしています。

 便器は、問題が無ければ将来のメンテナンスコストを考えると、3ピース(タンク、便器、便座)をお薦めしていますが、清掃性を重視されているので2ピース(タンク+便座、便器)か、トイレの外に洗面台があるのでタンクレスのどちらかになるでしょう。

平板スレートの改修。

平板スレート。
一般的には、商品名の『コロニアル』という方が通りが良いようです。

 薄いセメント板の屋根材ですが、これは天然スレートという薄い石の板を模した屋根材です。
かつてはアスベストを混ぜて作られていました。

 アスベストは先日、京都のアスベスト訴訟で最高裁の判断がでて原告側(被害者側)が勝訴しましたが、体内に入ると分解されず肺がんなどの健康被害を引き起こす鉱物です。

 安くて、耐熱性や耐久性に優れていて厚さ7mmのコロニアルを成り立たせるには、必要な材料でした。
しかし、世界的にその使用が禁止されている中、日本ではその後しばらく使い続けて多くの職人たちが苦しんでいます。


 さて、最近のリフォームの多くは『カバー工法』といいますか、既存の上に重ねて施工する事が多いです。
屋根、外壁、床、玄関建具等々。
カバー工法の利点は、廃材が出ないという事がまず挙げられます。

 廃材の処分費は年々値上がりしていますから、建物の寿命の時にまとめて・・という事になりますが、改修時点での費用は抑える事が出来ます。

 また、解体を行うと工期が伸びるという事もあります。
例えば、玄関サッシの場合、以前はサッシの枠を外す必要があったので、外壁をサッシの周りだけ切断し最後に新しい材料で補修をします。
屋内側も同様です。
改修したことは見ればよく分かりますし、見た目がイマイチなんて事もありますし、雨仕舞の不安はぬぐいきれません。
その点、カバー工法の場合は、外壁を壊すことなく、現在の雨仕舞はそのままに見ためも良く仕上げる事が出来ます。
やや枠が大きく見える位ですが、それ程気になる事もないでしょう。

 屋根や外壁も解体をして、新しい屋根材、壁材を施工するまでの間は雨漏りの心配や、防犯の心配が付いて回ります。
余程、下地に不具合が無ければカバー工法という事になるかと思います。

 ただし、既存の上に新しい材料を重ねますので耐震性については、危険側になりますので、なるべく軽い材料を選ぶ等注意してください。


 現在、コロニアルのカバー工法を検討しています。
築20年程度の丁度、コロニアルにアスベストが使われなくなった時期の建物。
補強材だったアスベストが使えなくなって、強度が落ちています。
屋根に上がってみると全体にひび割れが発生しており、角の部分が折れて落下している所もちらほら見受けられ、そろそろ何かしらの改修をおこなった方が良い状況です。
 雨漏りなどは見受けられないので、カバー工法をおすすめしました。

 カバー工法の場合、金属板を採用します。
トタン板と言うのは、もうしばらく前に使われることは無く、ガルバニウム鋼板と言うものが使われています。
芯が鋼板である事は変わらないのですが、メッキの成分が違います。
トタンは亜鉛メッキが施されていますので、亜鉛メッキ鋼板とも言います。
ガルバニウム鋼板は、メッキ成分の55%をアルミニウムを配合した亜鉛メッキを施し、耐蝕性などを向上させた鋼板です。
最近はこのガルバニウム鋼板の高性能版として、メッキ成分にマグネシウムを加えたSGL鋼板と言うものが製品化されています。
SGL鋼板は海岸近くでも使用できる位に耐久性が上がっています。

 一般的にはまだまだ、ガルバニウム鋼板でしょうか。
しかし、徐々にSGLに切り替わっていく事でしょう。
屋根材メーカーによってSGL鋼板の製品もラインナップされています。

 金属屋根で心配になるのは、『音』です。
雨音が気になるようになった。
そういった声が聴かれるように、既存の屋根材に密着する訳ではないので、0.3mm程度の金属板に雨が当たると音が気になる事もあるでしょう。
そこで、屋根材の裏にウレタンを取り付けて音を抑える製品があります。
ニチハの『横暖ルーフ』というものが、それに当たり、ガルバニウム鋼板とSGLが用意されています。

 もうひとつ、一部の方に根強い人気のある製品があります。
ガルバニウム鋼板の表面に、天然の石粒を焼き付けた屋根材です。
メーカーの言うには、天然石が雨粒を分散し、音を抑制することが出来るという事と、天然石で表面を覆っているので再塗装が不要という2点がメリットとしてあげられています。
材料費は単純なガルバニウム鋼板よりもかかりますし、流通量が少ないので送料等経費も掛かりますが、長い目で見ると再塗装が不要であるというのはかなりメリットがあると考えられます。

 トタンと違い、錆びる事は少なくなったガルバニウム鋼板ですが、表面の塗装は色あせたりしますし、塗装が劣化すると鋼板自体に雨が当たり、錆に繋がるという事もありますから、再塗装は必要になってきます。
 SGL鋼板についても、ガルバニウム鋼板よりも耐久性があるんで、メンテナンスのサイクルは伸びますが、塗膜は劣化しますから必要になるでしょう。

 
 屋根の再塗装をするとなると、足場を建てて行いますから、建物の規模にもよりますが50万円とか、その位は覚悟しなければなりません。
まぁ、大抵の場合は外壁のメンテナンスと同時に行う事になるでしょうから、足場を考えなくても30万円位はかかると思います。

 もし、今の建物をあと30年使うつもりだという事になれば、カバー工法で石粒付き鋼板が4~50万円多くかかるとしても、その後30年は屋根についてはメンテナンスフリー。
ガルバニウム鋼板だと、1~2回のメンテナンス。
SGLでも、1回。
将来の負担は軽くてすみます。

 リフォームは、今後どの程度の年数、その建物を使うかという事を、念頭にいれて考えたいものです。



ちょっと、蛇足ですが。

 石粒付き鋼板の屋根材で、屋根材と既存の屋根の間に空気層ができるので断熱性能があがるといいますが、効果のほどは・・。

 空気層があれば断熱性能は上がるでしょうが、室内にまで影響するような効果があるかと言うと、ま、無いでしょうね(個人的な感想です)。
屋根と室内の間には、小屋裏空間があり屋根面か天井面には断熱材が(ないこともありますが)あります。
小屋裏空間は換気口があり、外部と繋がっている場合が多いです。
輻射熱は空気は関係ないですし。

 最近の家ですと、断熱材の外側に通気層を設ける事も(屋根面でも)多いので、なおさら屋根材の断熱性能と言うのはあっても無くてもという事になると思います。
建物側の断熱材も厚くなって(いるはず)ですし。

 ガルバニウム鋼板に遮熱塗装が施されているものもあるので、そういったものを使うのが良いと思います。
遮熱は考えた方が良いと思います。

 遮熱は、熱を遮断するもので、断熱材とはまた違うものです。
熱を反射する事で、内側に熱を伝えないものです。
タイベックにアルミを蒸着したタイベックシルバーという透湿シートがあるのですが、以前雑誌でこの手の遮熱シートは、それ自体では遮熱効果が認められるものの、実際に施工された状態になると大した効果が認められないという報告がありました。

 小屋裏に通気層を確保する為に施工するのでメーカーに表裏を確認したところ、アルミ面を室内側にして、他の材料に接しないようにと言われました。

 どういうことなのですかね。

 金属、特にアルミニウムは熱伝導の高い材料ですから、他の部材に接すると熱を吸収して輻射熱を放出するとか、表面温度があがると遮熱効果に影響が出るとか、そういう事なんでしょうか。
詳しくは分かりませんが、遮熱という効果は認めますが、住宅で実際に高い効果を得るのは難しいと思っています。

更に蛇足ですが、袋入りのグラスウール、今は表も裏もプラスティックと言うか、ビニルというかそういったもので覆われていますが、かつては室内側はアスファルトを含浸させた紙で、屋外側はアルミを蒸着したフィルムでした。
 紙の方は室内の水蒸気を壁の中に入れない為の防湿層。
屋外側のアルミは、屋外からの熱線を半分にする為と学校で教わった記憶があります。

 アルミをいれると熱線を半分にしてくれると。
設置場所はどこでも良いとも。
それならば、2枚3枚と入れたら1/4、1/8になると思ったら、何枚入れても1/2だと言われました。
その時はどういう理屈か、・・今も分かりませんが、そんなものだと処理しました。

 仕事を始めて、グラスウールのアルミフィルムはそういう事だと思っていましたが、ある時、切り替わって無くなってしまった時には、コストの問題なのかと思っていましたが、上で書きました雑誌の記事で、ほぼ無意味だったと十何年越しに知ったのでした。

鳥居。

鳥居を奉納したい。

 そんな話が持ち上がり、ネットでいろいろと調べてみました。

 鳥居は稲荷鳥居と神明鳥居に分けられますが、実の所どんな素材でも形に細かな指定は無いのだそうです。

 それでも、一応、木製で作るときにも石で作る時でも柱と貫の寸法の比とか、笠木の反りとかその辺りには決まりと言うか、先人たちがたどり着いたバランスの良い形になる為の寸法の決め方があります。
柱脚の内法と貫の下端までの寸法は同じで正方形がそこに収まる(実際には柱が内側に倒れるので入らないですが)ようなバランスになっています。
柱の太さもこの正方形の辺の長さに対しての割合が決まっていますから、地面から貫の下端の高さを決めるか、柱脚の内法寸法を決めるとすべてが決まるようになっているのです。

稲荷鳥居も神明鳥居も、全体のバランスのとり方は変わらないのですが、手元の資料によれば、柱が寸胴なのが稲荷鳥居で、神明鳥居は上の方を少し細くするようです。
台輪の有り無し、柱脚の根包は神明鳥居の場合だけにあるようです。
また笠木の上端が山になっているか平らになっているかという違いもあるようです。
ま、大まかにはこんな感じという位で捉えておくことにします。

 その一方で、鳥居はその素材、形(鳥居としての大まかな形は決まっている)は奉納する人任せのようで、例えば鉄骨のアングルやフラットバー(平板)で作ったような線の細い鳥居なんてのも実際にあるようです。

 とは言っても、境内内にある他の鳥居とのバランスもあるし、そもそも地域の神社でそんなおしゃれな雰囲気でもないので、極端なものは避けたい。
他の鳥居と同じような形で納めたいというご意向もあり、木製で作ろうと。
木製で作るのであれば、先に書いたようなバランスの物が良いなと。

 ネット上で製造販売している所を探してみると、ありました。

 考えている大きさは、地面から貫下端が2m程度のもの。
そのお値段は、6尺の物しか記載がありませんでしたが、170万円とあります。

『!!』

 結構するものです。
この他に送料、建込費用、消費税となると250万円くらいにはなってしまうのでしょうか。
考えどころです。
実際に見積を依頼したわけではないのですが、その位かかってしまうのであれば、作ってみようかと。
こんな機会はきっとこの先ないだろうから、折角だからと。

 そういう事で、図面を引いてみます。
内法下端の寸法を決めて、柱の大きさ、貫の太さ、笠木の大きさ、反り等々。

 資料にある手順に従い線を引いていきます。

図面を描くのは資料があるので割と簡単です。
CADのお陰で、マウスとキーボードですらすらと描く事が出来ます。

 柱は、既存の物に比べて太くなり過ぎたので、既存に倣って細くしてそれに合わせて他の部材の断面も決めていきます。
それでも描いていると、疑問点が出てきますので、実際にある鳥居を見てみようと市内の神社を見て回りました。

 鴻巣と言えば、最近盛り返している鴻神社。
本殿を回収し、神楽殿を新築し、ライトアップしたりとさまざまな取り組みをしています。
桜の頃のライトアップは見事ですし、境内にある大きなイチョウが色づく秋の頃も素晴らしいものです。

 ここのメインの鳥居は石造りでした。
また、末社の鳥居は硬質塩ビのものでした。
硬質塩ビの場合、笠木の反りは表現されていないので、木製と石製の間位の印象でしょうか。
重厚さとか、美しさと言うのは鳥居の事を考えている事もあり、私には感じられませんでした。

 そうして見て回ると神社のメインの鳥居は石造りが多く、石造りは柱、貫、笠木とも円柱で作ってあるものもあれば、木製のデザインを再現したようなものもあります。
しかし、木製ではなくてはと市中から田舎へと範囲を広げて移動しました。
地域の小さめの神社は木製のものが多く、手元にある資料に倣ったような作りになっているものもあれば、地域の大工が見よう見まねで作ったのだろうなという少し抜けた雰囲気のものも多くあります。
 市内に、大野神社という昨年末に活動休止にはいった嵐のリーダーのファンがお参りに訪れる神社の鳥居が意外にも木製で、袖柱(設置環境の為片側のみ)のある割と立派なものでした。
直してそれ程年数が経過していないのか、朱色に塗られたその表面には、木製でしたがヒビはありません。
平鉋で削り出したようで、よく見ると完全な円柱ではなく細い面が見えます。
また、笠木の上に瓦が葺いてあり、作ろうとしていた物も屋根を掛けようと思っていたのでとても参考になりました。
手持ちの資料は笠木までなので。

 弊社の先代が若い頃に本殿を新築した馬室地区にある愛宕神社には、袖柱のあるケヤキで作られた立派な鳥居がありました。
袖柱が大きいなという印象でしたが、資料によると、その通りのようでした。
こちらは無塗装でした。
木目が見えるので、柱頭と笠木の間に入れる台輪をどう作るかという疑問が解けました。

 この2ヵ所の鳥居は大変参考になりました。

 次に考えるのは、どう加工するか。
特に笠木の反りと、断面形状。
反りは当然、材を曲げて・・なんて事は出来ませんから、反りまで含めた寸法の材料から切り出す事になります。
島木の断面は逆台形で、笠木は5角形。

笠木は端に向かって太く、反り上がります。
柱の間は平らではなくて、少し垂れています。
また、島木と笠木の2つの部材を重ねて笠木は出来ていますから、上手くくっつくように反り台の鉋を作って仕上げないといけないなと。

 柱は当然円柱。
丸太を削るか、ロータリーで加工してもらうか。
今回は稲荷鳥居なので、柱の上下で太さは変えなくても良いみたいだし。
素性の良い丸太を削っても良いし、角材を治具を作って8角形、16角形と電気鉋で丸い断面に近づけ、最後は鉋で仕上げていこうかとか。

割れるだろうなとか。
背割りを入れるのも良いが、それが正解なのかと。
何年も乾燥させた材料が手に入れば良いなとか。
表面のヒビはパテ処理して、朱色で塗ってしまうので良いのではないかとか。

 建てる時には、柱と貫を組んで建ててその後に笠木を載せるのだろう。
そうすると柱頭のホゾは、鉛直に加工するのだろうとか。
台輪は単純に貫通させるだけで良いのだろうかとか。
台輪で高さを微調整するのだろうとか。

 島木と笠木は柱のホゾで貫くだけで良いのか。
それとも、所々にダボとか入れた方が良いのかとか。

 足元は地面に埋め込むが、直接土に入れるのは避けたい。
コンクリートで基礎を作り、鳥居を建て込んだ後にコンクリートを充填し、上端はモルタルで盛り上げて埋めればよいかと。
それとも、水抜けを考えて砕石を少し入れてからコンクリートか。
それだと土中から水が入って来てしまうだろうから、水が入らないように密閉する様に基礎を作るかとか。

 既設の鳥居は300mm位の高さの根巻がしてあるからそれに合わせた方が良いだろうとか。
最終的に柱は倒れているので基礎に開けておく穴はどのくらいにするのか。
それを決めるには、柱はどれくらいの長さ埋めるのかとか。
埋めた部分の柱の腐れをなるべく防ぐ為の方法とか。
ネット状には柱脚に銅板を2重に巻いた施工例があったなとか。

 そういった事を考えているのは、楽しい時間です。

 それでも、最終的には硬質塩ビの鳥居に決定してしまったのですが。

『ガーン』

少し落ち込んでいます。

 ここまで考えたのだから、スケールダウンした鳥居を個人的に作ってみようかなとか。
そんな事を考えています。
多分、作らないと思いますが。

プロフィール

埼玉県鴻巣市で創業40年。 地域に根差し、お客様にとって最適な工事を提供出来るよう心掛けています。

HN:
加藤茂貴
性別:
男性
趣味:
コンガ、ジャンベ等パーカッション演奏
自己紹介:
会社名称:
 有限会社 カトウ工務店
 (1級建築士事務所併設)
所在:
 埼玉県鴻巣市松原1-20-10
tel/fax:
 048-541-1014 / 541-1017

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